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NewtonScript教室 その1

「Newton Toolkitの基本操作」



■Newtonはどうやって開発するのか?

 Newton。まあ、パソコンユーザーなら名前ぐらいは聞いたことあるでしょう。アップルコンピュータが出しているPDAですね。日本では最近になってようやく日本語が使えるようになるまで英語版の販売が続いたせいか、いまいち広まっているとはいえない感じですが、本国では天敵ザウルスもいないことで(笑)、PDAとしてはかなり広く普及しているようです。日本でもNewton 130よりやっと日本語がきちんと使えるようになったことと、かなり安く売られるようになった(今は130なら5万以下です)ことで、これから普及してくるのではないかと思います。

 この種の携帯情報機器というのは、買ったらそれでおしまい、組み込んであるプログラムをただ使うだけ、というイメージが強いのですが、Newtonは違います。Newton用のソフトが多数作られ販売されているのです。商品だけでなくフリーウェアやシェアウェアも多く流通しています。これが多くの他の情報機器と違うところでしょう。

 Newtonは単なる携帯端末ではなく、れっきとしたコンピュータなのです。NewtonOSという素晴らしいOSの上でさまざまなアプリケーションが動いています。開発ツールさえあれば、Newton用のソフトを作って自分のNewtonで動かしたり、フリーウェアとして流通させることもできるのです。小さいけれど、WindowsやMacなどと同じようにNewtonソフトウェアという世界を構築しているところがNewtonと他の情報機器との大きな違いといっていいでしょう。

 もちろん、他の情報機器でもプログラムの開発が不可能なわけではありません。ザウルスでもPalm PILOTでも、ちゃんとプログラムの開発はできます。ただし、それにはかなり本格的なプログラミングの技術と知識が必要になるのです。

 Newtonは、(もちろんそれなりに知識は必要ですが)もうちょっと簡単にソフト開発ができます。それというのも、Newtonが最初から開発の事を考えて作られているからです。

 Newtonには、「NewtonScript」という専用の言語が用意されています。これを使ってプログラムを開発し、コンパイルすると、Newton用のプログラムが作れるのです。多くの情報機器は、たいていはC言語などで機器のROM内ルーチンをコールしてプログラムを作るため、そうしたハード&ソフトの両面の知識が必要です。しかしNewtonScriptという専用の言語を用意し、必要最小限の知識の習得だけでプログラムの開発ができるような環境を用意してあるため、Newtonは他の情報機器とは比べ物にならないくらい開発が簡単なのです。

 このNewtonScriptを使った開発環境としては「Newton Toolkit (NTK)」というものがあります。これはアップルコンピュータがリリースしているもので、現在、インターネット上で配付されています。Newton関連の書籍やMac関係の雑誌のCD-ROMなどで入手できることもありますが、もし見つからない場合は、アップルコンピュータのNewtonのホームページからダウンロードして下さい。

http://newton.info.apple.com/index.html

 ここがそのページです。「COM」であることからもわかるように、これは米国のアップルのページです。NTKは残念ながらまだ日本語版はないのです。

 NTKのバージョンは、Windows版は1.6.1、Mac版は1.6.4になっています。1.6.4からはNewtonの最新機種である2100やeMate 300などにも対応していますが、Windows版がまだありませんので、ここではその前の1.6ベースで説明をすることにしましょう。基本的な部分は新しいバージョンでも同じですから、Macで開発をしたいという人は最新版をダウンロードするとよいでしょう。



■NewtonToolkitの基本

 では、NTKがどんなものか、実際に使ってみることにしましょう。−−NTKでは、「プロジェクト」というもので開発プログラムを管理しています。プロジェクトというのは、複数のファイルを一まとめにして管理するための機能です。

 NTKでは、いくつものファイルを作成します。画面に表示するものは「レイアウト」というファイルとして作成しますし、グラフィックやアイコンのデータは「リソース」というファイルとして用意するようになっています。一つのアプリケーションを作る時に、いくつものファイルを作ることもあるのです。そこで、「このアプリケーションではこのファイルとこのファイルを使いますよ」ということを管理するために用意されたのがプロジェクトです。

 では、実際にNTKを起動しましょう。すると、プロジェクトのファイルを開く画面が現れますから、とりあえずキャンセルしてください。NTKが起動します。まだ画面には何も現れません。

 では、「Project」メニューから「New Project」を選んでみましょう。プロジェクトのファイル名を入力するダイアログが開くので、そこで適当に名前を入力します。このプロジェクトのファイル名が、デフォルトではそのまま作成するNewtonアプリケーションのファイル名になります。

 さて、プロジェクトを作ると、画面にウィンドウが現れます。これがプロジェクト管理のウィンドウです。まだウィンドウには何も表示されていませんね。ここに開発に必要なファイルを組み込んでいくのです。

 NTKで使うファイルの中でもっとも重要なのは「レイアウト」ファイルです。最初の内は、このレイアウトを作ることがNewtonのアプリケーションを作ることなのだ、と考えてもいいでしょう。つまり「レイアウト=Newtonのアプリケーション」という感じです。

 レイアウトファイルというのは、文字通りNewtonで表示される画面のデータファイルです。それだけでなく、レイアウトされた部品に割り付けたプログラムなどもまとめてレイアウトファイルの中に保存されます。つまり「レイアウトとプログラム両方をまとめてあるファイル」だと考えて下さい。

 では、レイアウトを1つ作りましょう。「File」メニューから「New Layout」を選んでください。画面にウィンドウが現れ、同時にちょっと大きめのパレットも現れます。これがレイアウトウィンドウとツールパレットです。

 ツールパレットには、レイアウトで使える部品がアイコンでずらりと用意されています。ここから使いたい部品を選び、レイアウトウィンドウでマウスドラッグして配置するだけで、Newtonのアプリケーションの画面が作れてしまう、というわけです。なかなか簡単ですね。

 注意しておきたいのは、「作成したレイアウトは、まだプロジェクトには組み込まれていない」という事です。NTKでは、レイアウトを作ると自動的にそれを保存してプロジェクトに組み込む、といった芸当はできません。レイアウトを作ったら、それを保存し、ユーザーが手動でプロジェクトに組み込んでやらないといけません。プロジェクトへの組み込みは簡単です。

1.「Project」メニューから「Add Untitled Layout-1」を選びます。
2.ファイルを保存するダイアログが現れるので、名前を付けて保存します。

 これで完了。プロジェクトウィンドウを見て下さい。ちゃんと、保存したレイアウトファイルが表示されているでしょう?

 これでとりあえず「プロジェクトを作り、レイアウトを組み込む」というNTKのもっとも基本となる操作を覚えました。この「プロジェクトとレイアウト」というのは、開発の一番の基本となるものですから、その基本的な操作は忘れないで下さい。



■プロジェクトの設定とコンパイル

 では、レイアウトの方はちょっと置いておいて、プロジェクトの方に再びめを向けることにしましょう。−−先ほど、プロジェクトは複数のファイルを管理するためのものだといいましたが、実はそれだけのものではありません。プロジェクトは、作成するNewtonアプリケーションの性格(?)を決める、重要な役割を果たすものなのです。

 Newtonは、現在いくつかのハードがリリースされています。Message PadやeMateなどですね。またベースとなるNewtonOSも2.0や2.1にバージョンアップしています。プラットホームによって画面のレイアウトやプログラムなどは違ってきますから、作成するアプリケーションはどのプラットホーム用のものなのか、設定する必要があります。また、作成するNewtonアプリケーションの名前なども決めてやらないといけません。こうした細かな設定をするためのものが、「Project」メニューの「Project Setting」です。

 このメニューを選ぶと、画面に設定用のウィンドウが現れます。左側には3つのアイコンが並び、そこで設定したい項目を選ぶと、その詳細が右側に現れるようになっています。開いたときには、一番上のアイコン「Project Settings」が選ばれています。

 右側には、プロジェクトの細かなセッティングが表示されていますね。「Platform」ポップアップメニューは、デフォルトでは「MessagePad」となっています。これはつまり、「このプロジェクトはMessagePad用のソフトを作ってるんですよ」ということを示しているわけですね。他のチェックボックスの類いは、とりあえず今はわからなくて結構です。デフォルトのまま、触らないようにしておきましょう。

 さて、2番目の「Output Settings」アイコンをクリックすると、今度はコンパイルして作成するプログラムの種類などに関する設定画面が現れます。「Output」というエリアには、いくつかのラジオボタンがありますね。デフォルトでは、一番上の「Application」が選ばれているはずです。

 Newtonのプログラムは、その働きなどによっていくつかの種類があります。例えばMacではアプリケーションの他に機能拡張ファイルやコントロールパネルといった種類のプログラムがありますね。WindowsでもEXEの他にDLLなどのプログラムがあります。Newtonでも、いわゆるアプリケーションとして使うプログラムだけでなく、メモリに常駐して動作するプログラムやシステムを機能拡張するものなど、様々な形態のプログラムがあるのです。それを設定するのが、この「Output」ラジオボタンです。とりあえずこの講座では、Newtonのアプリケーションを作ることを目的にしていますから、「Application」を選択しておきます。

 その横には「Name:」「Symbol:」という表示があります。これは、いずれもNewton内部でのプログラムの呼び名に関係するものです。これらは、とりあえず、以下のように設定すると思って下さい。


Name:  《アプリケーション名》
Symbol: 《アプリケーション名》:《シグネーチャ》


 シグネーチャというのは、「制作者を示すサイン」のようなものです。Newtonの開発者は、みんなそれぞれ固有のシグネーチャをアップルコンピュータより取得します。そして、必ずプログラムには、このシグネーチャを設定するようにしてあるのです。こうすることで、その制作者が誰か手がかりを残すことになりますし、同じ名前のプログラムが2つあっても、制作者が違うことをはっきりさせることで区別することができます。

 まあ、まだ勉強の段階ですから、このシグネーチャは、デフォルトの「SIG」のままでよいでしょう。ただし、自分で作ったプログラムをフリーウェアなどで流通させようと思ったなら、自分のシグネーチャをアップルから取得すべきだ、ということは覚えておいて下さい。

 さて、3つ目の「Package Settings」アイコンをクリックしてみましょう。これは、コンパイルして作成されるファイルに関する設定画面です。

 今までNewtonのプログラムを「Newtonアプリケーション」などと呼んできましたが、Newton用に作成されたプログラムファイルは、正式には「パッケージ」と呼ばれます。このパッケージに関する設定をするのがこの画面なのです。

 一番上には「Name:」がありますね。これは、作成するパッケージの名前です。名前は、デフォルトでは「《アプリケーション名》:《シグネーチャ》」となっています。先ほどのSymbolと同じですね。これを書き換えれば、作成されるパッケージの名前も変更されます。

 その下には、「copyright」「version」といった項目があります。コピーライトとバージョンナンバーですね。これらは、必要に応じて記入します。他の項目は、例によってとりあえずわからなくて結構です。

 さて、これで一応プロジェクトの設定についてだいたいのことがわかりました。「OK」ボタンを押して設定ウィンドウを閉じましょう。

 あとは、コンパイルの方法だけわかれば、一応パッケージの作り方はマスターできたことになります(実際のプログラミングなどはまだ何もわかりませんが)。これは、とても簡単です。「Project」メニューより、「Build Package」を選ぶと、プロジェクトをコンパイルし、先ほど設定したパッケージ名でファイルに保存します。コンパイルが終わったら、プロジェクトファイルを保存してあるフォルダを開いてみましょう。ちゃんとパッケージファイルが作られているはずですよ。

 パッケージファイルは、全て「pkg」という拡張子がつけられています。これは消してしまったりしないで下さい。全てのパッケージにはこの拡張子がつけられているのです。

 ということで、とりあえずNTKでプロジェクトとレイアウトのファイルを作り、パッケージにコンパイルするまでの基本操作を覚えました。−−え、「まだ肝心のプログラミングが何も説明してないぞ」ですって? まあ、慌てないで。NTKは結構ややこしいツールなので、その基本操作をよく覚えておかないと先へ進めないのですよ。

 というわけで、基本操作を覚えたところで、次はいよいよプログラミングへと進むことにしましょう。


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