客の自由にはさせない
このサイトは私のものだ。だからやってきた客の自由にはさせない。そういうサイトが増えてる気がする。
なにかちょっとしたことを調べるのにググる(Googleで検索すること)ことがよくある。で、ググって見つけたサイトにジャンプしてあちこち見ることになるんだけど、どうも最近、「面倒くさいサイト」が増えてるなあ、とつくづく思うのでした。
その最大の要因は、「Flash」だ。そう、いきなりFlashのアニメーションが現れて、そこでクリックして操作するようなところがずいぶんと増えてきてるんだよね。はっきりいってFlashというのは、「Webサイトのゴミ」もしくは「Webの上のたんこぶ」以外の何ものでもない。まぁ、もちろん「Flashでないと表現できない作品」というのもあるにはある。だが世の中の大半の(特に多くの個人サイトの)Flashというのはそうした作品と呼べるものではなく、「あるだけ邪魔」なのがほとんどだったりする。
Webサイトというものの位置づけが変質してきているのだろうか。その昔、Webサイトというのは「情報を提供し、それを閲覧する場」だった。それが今では「自己表現の場」になりつつある。自己表現。ウエ。お昼に食べたチャーハンが喉元まで競り上がってきそうなくらい気持ちの悪い言葉だ。——いや、もちろん世の中にはしっかりした作品を世に送り出してる人々もいることは知っている。どんな作品であれ、それを自分で作り発表する場としてWebを活用しているならばそれは一つのあるべきWebの姿に違いない。
だがこの世にある多くのサイトは、「発表すべき作品を持たないサイト」だったりする。ものすごくきれいなFlashのアニメーションを使いまくったサイトを良く見てみたら、グラフィックもサウンドもフリー素材集からの転用、中身は他のサイトのリンク集やケータイで取り散らかした写真だけ、みたいなところだったりする。そしてそうしたサイトの作者が「自己表現」だの「作品」だのといった言葉を声高に叫び、自分のサイト内の情報を外部に流出させまいと必死に防衛する。そういうことが多くないか。
なにより「サイト内の情報を作者が統括し、閲覧するものの自由にさせない」という感じのサイトが増えていることが厭なのだ。僕は、「Webサイトに公開した情報は、それを閲覧する客のものである」と思う。いや、もちろん著作権だのといったことをいってるんでなくてね、「そこにある情報は、それを見たいと思って集まってくる人々のためにあるのか、見せようと思っておいている人間のためにあるのか」ということなのだ。
——僕のサイトにも、フリーウェアやらプログラミング関係のドキュメントやらがいろいろアップしてある。これらは「誰でも自由に使って欲しい」と思ってアップしてあるわけだ。であるならば、「誰もが自由に使いやすくする」ことをまず第一に考えるのが当たり前だろうと思う。だから、必要な部分だけをコピーしてったり、必要なページだけ自分のとこからリンクをはったりされても別に怒ることはない。その人が、そのほうが使いやすいんだろうから。もちろん、僕の側からすれば「こうして欲しいんだけどな」というのはあるけど、それはあくまで僕の立場であって、それをお客に押し付けたり、そうしないことに腹を立てたりしてもしょうがない。公開した以上、どう利用するかは客の自由であり、違法でない限りどんな利用の仕方をしても許されるべきだと思うからだ。
だが中には、自分が考えた通りにサイトを利用することを客に強要する人というのもいる。またFlashを多用しているところなどでは、そのおかげでコンテンツのテキストもコピーできない、図もダウンロードできないというところも多い。「テキストだって図だって作者の著作物でしょ」という意見もあるだろう。だが、それならWebで公開しなければいい。公開の方法は他にいくらだってある。インターネットのWebサイトという「誰もが自由に情報を利用できる場」を使って「作者の要求に従った形でしか情報を得られない、利用できない」ように作るその理由は何なのだ、と思うのだ。
インターネットが普及し、ツール類やソフトウェアがアップデートされ機能強化されていくに従い、こういう「作者のために作られているサイト」というのがますます増えていくような気がする。特定のプラグインをインストールしないと見られないサイト。特定のブラウザでなければ表示できないサイト。公開されているはずのコンテンツを自由に利用できないサイト。要するに、作者が「ほらほら見て見て」と自慢するためだけにしか存在していないようなサイト。そんなところが増えていくように思えてならない。
あなたは「インターネット」という新しいコミュニティに参加したのだ。であるならば、このコミュニティがどのようなことを考えて生み出されたのか、そのために自分はどのような形で参加できるのかを考えずしてどうする。あなたは、単なる「自己表現の場」としてこの場を利用することだけしか考えていないのではないか。自分がこの世界に何をどう貢献することで、この世界をより豊かなものにできるかということを考えたことがあるか。作品を「公開する」ということの意味を、Webサイト運営者の皆さん、どうか一度考えてみて下さい。
あなたのサイトは、あなたのためにあるのではない。
あなたのサイトは、あなた以外の人のためにあるのだ。
公開日: 金 - 10月 22, 2004 at 02:11 午後