あなたは父親ですか? それとも父ですか?
子供のためになりふり構わず何かをする。それができない父親は、親ではない。ただの父だ。
父親の乗る自転車の荷台から1歳児が転落し、その直後に来た車にひかれて死亡、という記事が載っていた。お父さんと一緒にお買い物にいく途中でこんなことになるなんてなぁ・・と思ったのだけど、ふと、「荷台」という言葉が引っかかった。「ん? 普通なら後部の椅子から、とかいうはずだよな?」と思ってよく読んでみると、その自転車には子供用の椅子はついていなかったという。ていうか、載っていた自転車の写真を見て驚いた。よく見かける、折りたたみ式の小型でちょっとおしゃれな自転車。後ろには申し訳程度の荷台がついているだけ。
こんなところに1歳児を乗せられるわけないだろうが。1歳だぞ? こんな背もたれもガードも保ち手もないようなタダの荷台の上に乗せて自転車をこいで、落ちないわけがないだろ? なんでそんなことがわからないんだ? 1歳なんだぞ? 1歳がどういうものなのかわかるだろ? 何考えてんだこの父親は。
・・最近のお父さんは、割と家事や子育てに積極的な人が増えつつあるという。それは僕も感じる。休みの日に近所を散歩すると、お父さんと子供が仲良く車を洗ったり水まきをしたりしている風景に出会う。最近は、お父さんも昔と違ってカッコよくなってきている。きれいなお母さんが好き!というのと同様に、カッコいいお父さんは子供も好きになるもんなんだろう。——が。カッコイイお父さんというやつに、僕は時としてどことはなしに不安を感じてしまうことがある。
事件を起こした父親の乗っていた自転車は、折りたたみのちょっとしゃれたものだった。最近、こういう「モノにこだわりをもったおしゃれなお父さん」が目につく。お母さんがママチャリを乗っているのに、お父さんは何やらものすごく高級そうな自転車を乗っている。家の中に「お父さんの趣味の部屋」なるものを用意し、高級なAV機器だのを揃えてシアタールームにしたり、なんたらかんたらのコレクションだのを立派なキャビネットに陳列して悦に入ったりする。家族が乗る無粋なワゴンとは別に、パパ専用の高級な外車を置いて休日は朝から晩までそれを磨いている。そういうお父さん。
別に、カッコよくいたい、こだわりをもっていたい、そういうのが悪いとは思わない。ま、僕はごめんだけど、そういうのがないとイヤだという未成熟な人間は多いんだろう。だが、お母さんならよくわかっていると思うのだけど、子育てというのは、時として「カッコだのこだわりだのいってらんない」ということがあるものだ。そんなもん投げ捨ててなりふり構わずやらないといけないことってのも時にはある。そんなとき、お父さんはカッコだのこだわりだのをさっぱり捨てられますか? そういう部分は全部ママに任せて、見栄えのいい「よき父親」の部分だけ引き受けてはいませんか?
くだんの父親も、出かけるときにママチャリに乗っていけばこんな事故は起こらなかったのだ。1歳児がいる家庭なら、必ずベビーカーかママチャリがあるはずだ。我慢してベビーカーを使うかママチャリを使えば、こんなくだらない事故は起きなかったのだ。幼い子供を持つ父親であるあなた。ちょっと自転車で子供を連れて買い物に出ないと・・というとき、何のためらいもなくママチャリに乗って出かけられますか? 僕はできます。もし、それができないなら、あなたは父親ではない。ただの父だ。
——よくデパートなどで、家族で仲良くおでかけしている微笑ましい光景をよく見る。パパにだっこされている幼い子。もし、ここで子供がおしっこをもらしたらどうなるだろう?とふと思う。パパは途端に顔をしかめ、おしっこまみれの子供をママに押し付け、自分一人で替えのシャツを買いに紳士服売り場に走るだろうか。
僕ならどうするだろう。おそらく、おしっこまみれの服のまま、平気で一日過ごせるだろう。実際、出かけてておむつからおしっこがあふれてズボンを濡らしたことも何度かある。子供のおしっこなんて大人に比べればきれいなもんだ。うんちまみれの娘を風呂場で素手で洗ったこともある。風邪をひいて鼻が詰まって眠れない娘の鼻水を口ですいだしたこともある。父「親」なら、そのぐらいできて当然だろ?
公開日: 土
- 6月 19, 2004 at 11:57 午前