発見された側の立場
幼児向けの本を読んでる。いや、意外に面白い。
だけど、そのまますなおに読み聞かせるのに抵抗を感じるところもあったりする。
我が家には世界文化社の幼児向けの本がずらっとある。教育というほどでもないけど、まぁ言葉がわかってきたら読み聞かせるのにこういった本は必要だろうと購入したわけ。で、暇を見て読んでいたりするんだけど・・。どうも納得いかない記述があったりする。
「科学ブック」というシリーズの「はつめい・はっけんものがたり」という巻があって、古今東西の主な発明や発見、冒険などをまとめてあるものなんだけど、それを読んでちょっと考えてしまった。
その1。「コロンブスのアメリカ大陸発見」のページがある。どうしてもこれが引っかかる。「南極大陸の発見」とかはわかる。それまで人類が誰もいっていなかった未知の大陸なのだからね。だけど、アメリカ大陸の発見ってのは・・どうしても釈然としない。「じゃあ、発見されるまで誰も住んでいなかったの?」と聞かれたら何と答えればいいんだろう。発見された側の立場をどう説明すればいいんだろう?
その2。「ヒラリーのエベレスト登頂」のページがある。タイトルもリード書きも絵も、ヒラリーが一人でエベレストの頂上に立ったように表現している。——テンジンは? 彼はなぜ消えた? よく読むと、本文の中で「イギリスたいのひらりーとてんじんが・・」と書いてある。では、なぜ2人が登頂しているイラストでなく、ヒラリーだけが描かれているんだ?
・・いや。もちろん、理由はわかっている。コロンブスがアメリカ大陸を「発見」したのは、それまでアメリカ大陸に住んでいた人間たちを「ヨーロッパ人と同じ人間」と思っていないからだ。テンジンの名前が消えたのは、彼が現地のガイドだったからだ。だから、こうした人間たちは「いなかったこと」にして歴史は書かれる。
それを、子供に教えるのか。オレが? そりゃ無理だよ。だって知っているもの。コロンブスが発見する前からアメリカ大陸には独自の文化と文明を持った人々が住んで暮らしていたのだし、エベレストに初登頂したのはヒラリーとテンジンであり現地のシェルパがいなければイギリス人だけでは決して登頂できなかったということも。それに目をつぶって教えるのは無理だ。
じゃあ、「この本は間違っているんだよ」と教えればいいのか。だけど学校に行くようになれば、必ず「コロンブスがアメリカ大陸を発見した」と教えられるだろう。そうテストに書かなければ○はもらえないだろう。そこのところをうまく説明できるだろうか。難しいよ。難しい。
公開日: 火 - 11月 18, 2003 at 09:23 午前