夏は来ぬ


まもなく、夏が、来る。エアコン1台の我が家に。

いよいよ、「夏」が近づきつつあります。今年の夏は、新居で過ごす初めての夏であります。期待と不安がないまぜとなった気持ちなのであります。なぜならば、我が家には、エアコンが1台しかないからであります。

一戸建ての新築の家で「エアコンが1台しかない」といえば、「エアコンがキライ、苦手」とか「高原にでも住んでいる」とか、まぁ特殊な事情があるに違いない、と思われるだろう。が、全くそういうわけではない。我が家は千葉の平地だし、妻などはエアコンがないと死ぬ体質だ。にも関わらず、1台だけ。となれば、「金がなくてつけられなかった」ことは想像に難くないだろう。

実際、その通りなのだが、しかし敢えて言い訳をするなら「ログハウスが日本の夏にどれだけ耐えうるか」を検証する、壮大な実験計画の一環なのだ、という面も(ちょこっとだけ)あるのだ。実際、我が家と同じログハウスの中には、千葉でエアコンなし生活を送っている家も数軒あるとのこと。「ログハウスは夏に強い」といわれるのは、はたして都市伝説なのか、それとも事実か。それをこの一年で徹底的に調べてやろうじゃないか、というわけ。

最近の家は、高気密高断熱を売り物にしているところが増えている。こうした家では、冷暖房も最初からシステムとして設計されている。セントラルヒーティング、全館空調・全館冷暖房! そんな言葉がどのハウスメーカーでも聞かれる。「やっぱり、快適に暮らすには全館空調がいいのだろうなあ」などと、ハウスメーカーを回っていた頃にはあれこれ調べてみたりしたのであった。

が。ログハウス・メーカーを訪ねたとき、衝撃を受けたのでした。「エアコン? つけてない人もいますよ」

冷暖房をどうするか。それは、快適な生活を考える上で、今や当たり前のものであったはず。それが、よもやまさか「ない生活」なんて選択肢があったとは。それはまさに盲点だった。なしで暮らせるわけがない。そう当たり前のように思い込んでいたのだよね。

考えてみれば、ログハウスに出会って、それまで当たり前と思っていたものをずいぶんとあれこれ破壊されてきた気がする。例えば、間取り。我が家は、ほとんどワンルームのような間取りになっている。サロン、ダイニング、キッチン、2階リビング、仕事場と、家の半分以上のスペースが一つの空間でつながっているのだ。これも「きっちりと部屋を分けて間取りを作るのが当たり前」と思っていた従来のイメージを破壊してくれた。ログハウスのプランを眺めていると、中には「玄関がない」プランもあるし、お風呂がなくてサウナだけなんてプランもある。どれもこれも真っ当なハウスメーカーではまず出会うことのないものだ。

人間ってのは妙なもんで、自分の意見や考えってのは、「自分で考え、自分で決めたことなのだ」と当たり前のように思い込んでいるところがある。だけど、実はそのほとんどは、どこかで見たり、誰かから聞いたりしたものを、さも「自分の考え」であるかのように思い込んでいるだけだったりするのだよね。それで、さも当たり前のように「間取りは4LDKぐらいないと」などといったりする。——なぜ、そうでないといけないんだ? そもそも、なんで家を「リビング」「ダイニング」「キッチン」と分けないといけないんだ? そんな根本的な疑問を持つことなど、ログハウスに出会わなければおそらくなかったに違いない。

ともあれ、まもなく夏が来る。常識はずれの家は、日本の常識はずれの夏に太刀打ちできるのか。不安と、ちょっとだけ楽しみと共に、夏が近づきつつある。

公開日: 月 - 5月 26, 2008 at 05:32 午後        


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