ランタサルミへの提言
ランタサルミはHONKAには勝てないのか? いや、勝てるような工夫が足りないのだ。
とりあえず、ちょと落ち着いて来たところで、ログハウスに住み始めてからの感想のようなものを書いておこうと思う。
まずは、「快適」の一言につきるのだけど、それで終わっちゃ話にならない。実際に住めばわかることだけど、「周り中が無垢の木に囲まれている」というのは、思いの外に気持ちいいものだ。今でも、夜、ベッドについてぼんやり部屋を眺め回すと、「まるでどこか旅行に来ているようだ」と思う。素敵なペンションのようなところに泊まっている感覚が消えない。こんなところに「住んでいる」なんて……どうも、未だに実感が沸かないのだね。
部屋に積まれた段ボールが減って来て、自分の家らしくなってくるにつれ、逆にこの「自分の家じゃないみたい」感は強まってくる。本当に、ごく普通の感覚の「自宅」というレベルからかけ離れて快適すぎるのだ。——といっても、例えば「高気密高断熱」とか「床暖・セントラルヒーティング」のような「機能としての快適さ」ではない。いわば、「空気」の快適さなのだな。考えてみれば、僕らは「快適」とは「便利」の同義語だと思って今まで生きて来ていなかったか。だが、快適とは、「心やからだの臨む通りの条件が満たされていて、とても気持ちのよいさま」のことなのだ(by.大辞林)。
便利であることは、「簡単な操作で、快適な環境を作り出してくれる機能が用意されている」だけでしかない。だが、ログハウスの快適さとは、「何もなくとも、ただそこにいるだけで、心と体が満たされる」快適さなのだ。これは、実際に経験したものでなければわからない部分なのだろうけれど。
ただし! こんなにも快適なのは、おそらくは「ランタサルミ」のログハウスだから、だろうとも思う。いや、正確にいえば「ランタサルミかHONKAのログハウス」だから、だろうか。他にも、小さなところで地道にいいログハウスを建てているところはあるだろうけれど、いわゆる大手と呼べるところで、これほどに完成度の高いログハウスを提供できるのはこの2社だけしかないと思う。標準で用意されるログ材、建具、屋根や基礎などの構造等、あらゆるものが高品質であり、何も追加しなくとも既に必要にして十分に完成されたものがそこにある。そういう安心感がある。
とはいえ、僕は諸手を上げて「だからランタサルミのログハウスを建てましょう!」とはいえない。個人的には、やはりHONKAのほうを勧めることになるだろうと思う。ログ本体の品質としては両者はほぼ同じだが、それ以外のところでどうしてもランタサルミはHONKAに負けている部分があるのだ。
個人的に、ランタサルミにはもっと頑張ってもらいたい。だからこそ、ここでどのようなところが問題なのか、僕の感じたところをあげておきたい。
・オプションが少ない!
これが、もっとも不満を感じる部分だ。ランタサルミは、オプションの用意があまりに少なすぎる。HONKAの場合、扉や窓のデザインなどから、窓の桟の形状、ドアノブの種類といったものまできめ細かにオプションが用意されている。ランタサルミの場合、例えばドアノブは「ただ1種類だけ」である。こうした細かなところで「ここはこうしたい」ということに応えるものがなさ過ぎる。
・コーディネーターの不在
HONKAにはコーディネーターがいて、家の壁や屋根の色、キッチンや照明などを細かにコーディネートしてくれるという(僕が問い合わせたところではそうだった)。そうした、トータルコーディネートをしてさまざまな助言をしてくれる存在が、ランタサルミにはいない。すべて自分で決めるというのは、素人である顧客には難しいことなのだ。このとき、相談できる専門家がいるかどうかというのは大きい。
特に、大きな差を感じるのが、「外壁の色」だ。HONKAは、屋根、外壁、窓、窓のフレームを絶妙な色合わせでデザインしている。が、ランタサルミは「この色の中から選んで下さい」というだけだ。アマチュアのセンスでは、HONKAのような微妙な色合わせは無理なのだ。どうか、この種の専門家を用意して下さい。
・フリープランであることが活かされていない
HONKAには、魅力的なモデルプランがずらりと揃っている。ランタサルミの場合、原則「すべてフリープラン」だ。が、「すべて自由です」というのは、初めて家を建てる人間にはあまりに難しすぎる。結局、多くの顧客は「デザインライブラリ」というデザイン集から好みのものを選んで、それをベースに設計してもらうことになる(我が家も実はそうだった)。要するに、「すべてフリープラン」といいながら、実質、デザインライブラリがモデルプランとなっているのだ。
HONKAはモデルプランを利用すればおそらくランタサルミより安い。が、「完全なるフリープラン」で建てる場合、ランタサルミの方がHONKAよりも安く建てられると思う。この「フリープランを安く」という最大の売りを、もっと活かすべきだろう。今の状態では、顧客にこのことがうまく伝わっているとはいいがたい。「もっとも高品質なフリープランのログハウスを、もっとも安く建てられる」ということをもっとうまく活用できるよう考えて欲しい。
ログハウスは、まだまだ一般の住宅用としては認知されていない。よりよいログハウスが広まるには、HONKAの独走よりも、よきライバルとの競い合いが必要だ。今のところ、ライバルの候補たり得るのは、ランタサルミしかない。だからこそ、もう少し頑張って欲しい。ランタサルミのためにも、HONKAのためにも。日本のログハウスの未来のためにも、ね。
公開日: 金 - 11月 9, 2007 at 09:47 午後