悪い人間はすべてを否定されるの？
変なニュースが流れてる。小学生を連れ回してつかまった警察官のこと。そりゃ、悪い人だよほんとなら。でも、だからって何もかも否定しないといけないの？
佐賀県で、子供を車で連れ去ったってので現職の警察官が捕まった。それはまぁ、それで置いておくとして、その警官が、５年前（警察官になる前）、コンビニでバイトしていたときに強盗を捕まえたとして表彰されていた、ってのをニュースで流していた。——これが、どうもうまく飲み込めない。なんでこんなものがニュースとして報道されるんだろう。報道する側は、一体、何を視聴者に求めているんだろう。
「ほらほら、こいつ、昔はこんなことやってたんだよ。悪いやつなのに、いい人ぶってやがったんだよ」とでもいいたいんだろうか。それとも「こいつはこんな悪いやつなのに、佐賀県警はそうと知らずに表彰までしてた。この責任、どうとってくれるんだ？」といいたいのか。あるいは「こんないいこともしてたんだから少しぐらい悪いことしても大目に見ろよ」ということなのか。一体、どういうことなのかさっぱりわからない。——悪いことをして捕まった人がいた。その人は、昔はいいこともしてた。で？ それがどうだというんだ？
人はいいことをしながら悪いことを考えたりする。悪いことをしながらいいことを行なったりする。これは、故・池波正太郎さんがいっていたことだ。この世に絶対的な悪人とか絶対的な善人なんていない。善人だってふと魔が差して悪いことをすることだってあるし、悪人だって時には良い行いをすることだってある。人殺しだって、目の前で子供が溺れそうになっていたら思わず助けてしまうこともあるだろう。人間って、そういうもんじゃないか？
別に、この警官を弁護しようってことじゃないよ。もし悪いことをしたのが事実なら、罪は罪としてきちんと裁かなければいけない。だけど、もし、その一事をもって彼が過去に行なった良い行いまで全てを否定しようというのだとしたら、それは絶対に間違っている。
悪人は、なぜすべてを否定されなければいけないのか。その人がそれまで生きてきた過程でなした、さまざまな行いまで、なぜすべて「なかった」もののようにされなければならないのか。——もちろん、世の中には取り返しのつかない罪というのもあるだろう。けれど一つの罪がその人の全人生、全人格を否定することだけは我慢がならない。
一体なぜ、そんな考えがさも当然のような顔をしてまかり通ってしまうのだろう。——思うに、それは多分、多くの人が、人間というものを「善」か「悪」かのどちらかにきっちり分けて考えようとしてしまうからではないだろうか。「この人は『善』だ」「この人は『悪』だ」という二者択一の目でしか他人を見られない人間が増えているからではないか。
三浦和義って名前、みんなまだ覚えているよね。かの「ロス疑惑」事件の人だ。愛人を殺そうとしただの、新妻を殺しただの、ずいぶんと世間を騒がせた人だ。——では、彼がその後の裁判で、無罪判決となったことを知っているだろうか。自分の妻を人を雇って殺したというかの「ロス疑惑」事件は、実はメディアがでっちあげた冤罪だったのだ。
その彼が、しばらく前に、本屋で万引きをしたとかでニュースになっていた。——報道したテレビ局および新聞社の人間に問いたい。おたくは、万引き事件を全て報道するのですか？ そんなこと不可能ですよね？ では、なぜ彼だけが、万引きで報道されなければいけないのですか？ 彼が、ロス疑惑の人だからですか？ そもそも、あの疑惑というものが実はあなたがた報道する側によって作られた冤罪だったことについて、どこかで謝罪しましたか？ そうしたことは忘れ、「ほうら、あのお騒がせの三浦和義が今度は万引きをやった」と報道するのが正しい報道のあり方なんですか？
あなた方は、一度悪いとされた人間は、死ぬまで悪い人間として扱わないと気が済まないんですか？
おそらく、ほとんどの人は、彼が無罪になっていることなど知らないだろうと思う。知らないままに万引き報道を見せられ、「なんだ、懲りてないな全く」などと思ってしまうのだ。その万引き事件というのも、実は、各階ごとに精算するのを知らなかった三浦氏が雑誌を持ったまま別の階に移動しようとしたのをとがめられた、というだけのもので、普通なら「すいません、今度から気をつけます」で終わる程度の話。ニュースとして報道する意義など微塵もない。
なぜ、メディアは彼の無罪確定をほとんど報道しなかったのか。なぜ、その後も彼を悪人扱いし続けるのか。そんなの決まってる。彼は、メディアによって一度「悪人」と決定された人間なのだ。「悪人」という箱の中にジャンル分けされた人間なのだ。マスメディアにとって、一度「悪」と決められた人間は、死ぬまで一生「悪」なのだ。たとえ無罪だろうが、彼が「善人」に戻されることは決してないのだ。そうじゃないか、メディアの皆さん？ あなた方の報道の姿勢は、つまりそういうことなんじゃないですか？
人間を「いい側」「悪い側」という２つの枠の中におさめて事足れりとする風潮に、僕は断固として反対する。人間の善悪を、そんな単純に決めつけることができてたまるものか。異論がある報道関係者は、一歩前へ。
「ほらほら、こいつ、昔はこんなことやってたんだよ。悪いやつなのに、いい人ぶってやがったんだよ」とでもいいたいんだろうか。それとも「こいつはこんな悪いやつなのに、佐賀県警はそうと知らずに表彰までしてた。この責任、どうとってくれるんだ？」といいたいのか。あるいは「こんないいこともしてたんだから少しぐらい悪いことしても大目に見ろよ」ということなのか。一体、どういうことなのかさっぱりわからない。——悪いことをして捕まった人がいた。その人は、昔はいいこともしてた。で？ それがどうだというんだ？
人はいいことをしながら悪いことを考えたりする。悪いことをしながらいいことを行なったりする。これは、故・池波正太郎さんがいっていたことだ。この世に絶対的な悪人とか絶対的な善人なんていない。善人だってふと魔が差して悪いことをすることだってあるし、悪人だって時には良い行いをすることだってある。人殺しだって、目の前で子供が溺れそうになっていたら思わず助けてしまうこともあるだろう。人間って、そういうもんじゃないか？
別に、この警官を弁護しようってことじゃないよ。もし悪いことをしたのが事実なら、罪は罪としてきちんと裁かなければいけない。だけど、もし、その一事をもって彼が過去に行なった良い行いまで全てを否定しようというのだとしたら、それは絶対に間違っている。
悪人は、なぜすべてを否定されなければいけないのか。その人がそれまで生きてきた過程でなした、さまざまな行いまで、なぜすべて「なかった」もののようにされなければならないのか。——もちろん、世の中には取り返しのつかない罪というのもあるだろう。けれど一つの罪がその人の全人生、全人格を否定することだけは我慢がならない。
一体なぜ、そんな考えがさも当然のような顔をしてまかり通ってしまうのだろう。——思うに、それは多分、多くの人が、人間というものを「善」か「悪」かのどちらかにきっちり分けて考えようとしてしまうからではないだろうか。「この人は『善』だ」「この人は『悪』だ」という二者択一の目でしか他人を見られない人間が増えているからではないか。
三浦和義って名前、みんなまだ覚えているよね。かの「ロス疑惑」事件の人だ。愛人を殺そうとしただの、新妻を殺しただの、ずいぶんと世間を騒がせた人だ。——では、彼がその後の裁判で、無罪判決となったことを知っているだろうか。自分の妻を人を雇って殺したというかの「ロス疑惑」事件は、実はメディアがでっちあげた冤罪だったのだ。
その彼が、しばらく前に、本屋で万引きをしたとかでニュースになっていた。——報道したテレビ局および新聞社の人間に問いたい。おたくは、万引き事件を全て報道するのですか？ そんなこと不可能ですよね？ では、なぜ彼だけが、万引きで報道されなければいけないのですか？ 彼が、ロス疑惑の人だからですか？ そもそも、あの疑惑というものが実はあなたがた報道する側によって作られた冤罪だったことについて、どこかで謝罪しましたか？ そうしたことは忘れ、「ほうら、あのお騒がせの三浦和義が今度は万引きをやった」と報道するのが正しい報道のあり方なんですか？
あなた方は、一度悪いとされた人間は、死ぬまで悪い人間として扱わないと気が済まないんですか？
おそらく、ほとんどの人は、彼が無罪になっていることなど知らないだろうと思う。知らないままに万引き報道を見せられ、「なんだ、懲りてないな全く」などと思ってしまうのだ。その万引き事件というのも、実は、各階ごとに精算するのを知らなかった三浦氏が雑誌を持ったまま別の階に移動しようとしたのをとがめられた、というだけのもので、普通なら「すいません、今度から気をつけます」で終わる程度の話。ニュースとして報道する意義など微塵もない。
なぜ、メディアは彼の無罪確定をほとんど報道しなかったのか。なぜ、その後も彼を悪人扱いし続けるのか。そんなの決まってる。彼は、メディアによって一度「悪人」と決定された人間なのだ。「悪人」という箱の中にジャンル分けされた人間なのだ。マスメディアにとって、一度「悪」と決められた人間は、死ぬまで一生「悪」なのだ。たとえ無罪だろうが、彼が「善人」に戻されることは決してないのだ。そうじゃないか、メディアの皆さん？ あなた方の報道の姿勢は、つまりそういうことなんじゃないですか？
人間を「いい側」「悪い側」という２つの枠の中におさめて事足れりとする風潮に、僕は断固として反対する。人間の善悪を、そんな単純に決めつけることができてたまるものか。異論がある報道関係者は、一歩前へ。
公開日: 日 - 2月 22, 2004 at 02:12 午後