やってもーた


久々に、なんちゅーかいらんもんを買ってしまいました。それは、「大人の科学」の・・アレです。アレでわかった人は、かなりのアレな人ね。

本屋さんに出かけたところ、レジの脇に積み上げてある箱の中に、アレを見つけてしまったのが運のつき。とうとう買ってしまいました。学研の「大人の科学」のシリーズ一番の人気商品。「電子ブロック」であります。しかも、ソーラーキット付きの限定版。1万5千円。で、さっそく帰ってきて、いそいそとレフレックスラジオなんぞを組み立てて聞いたりしておりました。現在のパッケージには本体の他に「学研電子ブロックのひみつ」なる解説書まで付属していて、なかなかお買い得。

現在三十代〜四十代ぐらいの男性は、2種類に分類できる。「電子ブロックに憧れた人」と「全く興味なかった人」だ。これはたいていの場合、「メカモに憧れた人」と「そうでない人」と重なり合う。そう、僕らが子供の頃には、こうした「科学のおもちゃ」というのがけっこうあった。電子ブロックも、似たような類似品が出ていたし、昆虫採集キットとか日光写真セットとかリトマス試験キットとか、そういう「科学する心」につけ込む、もとい、を刺激するおもちゃがけっこうたくさんあった。

思えば、それはまだ科学が僕らのすぐ身の回りにあった時代でもあった。中学生ともなれば自前の半田ごてをもってるやつはけっこういたし、ラジオやバイクを分解してケツが真っ赤に腫れ上がるまで怒られたガキもたくさんいた。それが、いつのころかこうした「科学きちがいなガキ」というのを次第に見なくなってしまった気がする。——「電子ブロックのひみつ」に電子ブロックの歴史を漫画で描いてるページがあったんだけど、そこでこう記述があった。

「80年代にはいると売り上げは次第に鈍化。ゲームウォッチやファミコンにトイの王者を明け渡すことになった。子供たちは自分で作り出す回路より、出来合いのゲームを好むようになり、次第に電子ブロックに興味を失っていった。」

・・そうなんだろうな。テレビゲームというのはよく「諸悪の根源」みたいにいわれるけど、僕はゲームそのものが悪とは全く思わない。ただ、おもちゃの中身をブラックボックス化し、「知ることができないもの」「興味を持てないもの」にしてしまったことは確かだ。それ以前のおもちゃは、たいていのものは分解できた。僕らは自分のおもちゃを(親の目を盗みながら)ねじ回しで分解し、バラバラにして楽しむことができた(その後、たいていこっぴどく怒られたが)。野球盤も銀玉鉄砲もゼンマイで動く鉄人28号も僕らはすべて分解できた。・・もちろん、さすがに「組み立て」まではできなかったが。

ファミコンは分解できない。いや、しても「これでなぜゲームが動くか」を見ることはできない。ファミコンの時代になり、おもちゃは「中を見ても理解できない代物」になってしまった。・・かわいそうだな。今の子供たちは。電子ブロックよりプレステ2のほうが面白いしカッコイイし、今の方がおもちゃも恵まれているよ、って? いいや、かわいそうだよ。作ることも壊すこともできないおもちゃばかりに囲まれて遊ばないといけないなんて。あらかじめ決められた通りの遊び方しかできないおもちゃで遊ばないといけないなんて。そうは思わない?

「大人の科学」のシリーズは、どれもかなり好評なようだ。中でも電子ブロックは相当なヒットらしい。でも、それは「大人の科学」だからなんだ。子供は、買わないんだ。そこがちょっと淋しい。——ただね、お父さんが買っていじってると、子供が興味を持って、結局とられてしまった、なんて話もけっこうあるみたいだ。そう考えると、これはまんざら捨てたもんでもないのかな。今でも、目の前に見せられれば、目を輝かせる子供はきっといるんだ。そこにきっと、幾ばくかの希望はあるんだろう。

  ◇  ◇  ◇

・・それとね。ふと気づいたんだけど、これはひょっとして初めての「父親をターゲットにした商品」なんじゃないだろうか。バブル以降、売れる商品のほとんどは「女性」か「子供」か「孫を持つ祖父母」をターゲットにしたものばかりだった。「父親」をターゲットにしたものなんて、発泡酒ぐらいしかなかったんじゃないか。なにせ父親は「金」がない。家庭の中でもっとも経済力のない人間、それが父親だ。——だけど、「大人の科学」は、これはどう見てもお父さんのためのおもちゃだ。これをいそいそと買いにくる女性というのは想像するのがかなり難しい(いるんだろうけどね)。

ひさびさに目にする、お父さんのための商品。いそいそと買って帰り、ママの冷たい視線にもめげず鉱石ラジオだのエジソン型蓄音機だの大江戸からくり人形だのを作る。そして動かす。もしそこに「健全な知的好奇心をもった子供」がいれば、断言してもいい、生まれて初めてあなたを「尊敬のまなざし」で見つめるはずだ。——そう、これは「父親の復権」のためのアイテムなのだ。ありがとう、学研さん。「科学と学習」の時代から、ずっとあなたを信じてきて本当によかった。さあ、お父さん。あなたもこれで尊敬を取り戻そう!

・・ただ、一つ問題なのは、うちの子がまだ1歳5ヶ月だってこと。さすがにまだ見てもわからんだろうなぁ。

公開日: 土 - 2月 14, 2004 at 05:44 午後        


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