固有名詞がそんなに大切？
「南セントレア市」が、決定を白紙に戻し、もう一度名前を決め直すことになったそうだ。やれやれ。
南セントレア市。もう、どこかで一度ぐらいは耳にしたことがあるはずですね、みなさん。「うぷぷぷ。アホちゃうかこいつら」と、ずいぶんとまぁ楽しませてくれたバカ市名でありました。それが全国から「そんなバカな名前の市にするのかお前！」と抗議が殺到したそうで、もう一度名前を考え直すことになったそうです。
問題となっているのは、愛知県の美浜と南知多。この２つの町が合併するので新しい名前を合併協議会というところが全国から募集したのだね。で、「南セントレア」という名前に一度は決まったのでした。——「セントレア」ってのは「セントラル」と「エア」を一緒にした造語。これは、この町の隣に中部国際空港ができてるんだけど、それの愛称がセントレア（うぷぷ・・）なんだそうで、それにちなんだわけだね。ところが、この「セントレア」って名前は、実は全国から募集した名前の中には一つも含まれていなかったんだという。つまり、名前を募集しておいて、実際にはそれらをまるっきり無視して合併協議会が「これがいい」と全く別の新しい名前を付けちゃったわけ。ということは、これは最初っから「募集した名前をつける気などなく、南セントレアに決まってた」ということだな。
ま、名前が決まる経緯に問題があるし、せっかく全国から募集したんだからそれを無駄にするのはあまりに情けない。だから、「集まった名前の上位のものと『南セントレア』（まだ諦めきれないらしい・・）の中からいいと思うものを住民投票で決める」という今回の決定は、まあ妥当なものだろうと思う。——僕が今回、いいたいのは、そういうことじゃない。それは、「全国から抗議が殺到した」という部分だ。
まず、「なぜ、とある町の名前を決めるのに、その町とは関係ないところに住む人間が抗議するのか」という素朴な疑問がわく。自分が住んでいるならわかる、だが行ったことさえない、今回の騒ぎがなければ一生知らなかっただろう町の名前にケチを付ける人間がたくさんいるということがよく理解できない。——更に、抗議の大半は「今までの歴史や文化と全く関係ない名前を付けるのか！」といったものだったという。そこのところも実はよくわからないのだ。つまりね、「なんで町の名前をつけるのに、歴史だの文化だのにしばられないといけないのか」ということが、だ。
そもそも美浜という名前は、「美しい浜に囲まれた町」という理由で昭和40年につけられた、歴史なんてものとはほとんど関係ない新しい名前だ。南知多（知多）に関しては、おそらく知多臣から由来すると思われ（違うかも知れないけど）、こちらはかなり歴史的な経緯がありそうな感じがする。だから南知多については「歴史的文化的うんぬん」というのはわかるけど、美浜などはそれ自体が歴史的にも文化的にもあんまり考えずに付けられた名前ではないか。美浜のときはそれでよかったが、南セントレアはまずいのか。「文化的歴史的」とかいうから話がややこしくなるのだ。「変な名前だから」——理由はそれだけで十分じゃないか。なんだってそこに文化だの歴史だのを持ち出すのか。だいたい、抗議をした人間は、美浜と南知多の名前の由来などまできちんと調べた上でいってるんだろうな？
日本にある地名、それらの多くは、実は歴史や文化とはあんまり関係ないものだったりする。例えば、「東京」。これはたかだが明治以降につけられた程度のもので、歴史を重んじるなら「江戸」のままにしておくべきだろう。僕が住んでいる千葉にしたところで、本来は上総、下総、安房といった名前であった。それなら千葉なんぞより今でもよく使われている「房総」のほうがあっている。日本の結構な数の県・市・町の名前は、明治以降に「それまでの歴史なんぞを踏まえないでてきとーにつけられた」ものだったりしないか。
そもそも、日本人はそんなに「歴史的な名前」を大切にする人間たちだったろうか。昨今の子供たちの名前を見てみればいい。日本人とは思えない、男か女かさえわからない、まともに読むことさえできないような名前を付けて得々としている親のいかに多いことか。日本の会社とは思えないカタカナや英語名の企業。インターネットにつなげば意味不明なハンドルや読み方さえわからない名前のWebサイトが氾濫している。日本人が名付ける固有名詞の大半は、日本の文化や歴史など屁とも思わないようなものばかりだ。そしてそんなものを「カッコイイ」「おっしゃれ〜」などともてはやす人間ばかりではないか。
本当に「名前は文化なのだ」というならば、南セントレアに限らず、あなたの名前、あなたの子供の名前、あなたが勤める会社の名前、あなたが作った製品の名前、そうしたあなたに関係するところからまず「その名前は文化的歴史的に見てどうなのか」と声を上げるべきだろう。自分とは何の関係もない、文句をいっても何も責任が生じない安心して文句をいえる相手だけに抗議するという姿勢が情けないじゃないか。本当に、あなたは心の底から「名前は文化だ」と思うのか？
・・まぁ、インターネットを「南セントレア」で検索すれば、山のように「南セントレアに反対、抗議する」というページが見つかるのはわかっております。世間一般の認識はそういうものだろうともわかっております。だから、あえてその反対の見方をここに書いておきたかったのでした。人の尻馬に乗って文句をたれているだけの人が偉そうにしている状況にちょっとカチンときたので、ね。天の邪鬼な考え方であることはよくわかっておりますよ。——だけど、「名前なんてものはただの符号だ。それ以上でもそれ以下でもないのだ」という考え方も世の中にはあるんだ、ということも知っておいて損にはならんでしょう。
問題となっているのは、愛知県の美浜と南知多。この２つの町が合併するので新しい名前を合併協議会というところが全国から募集したのだね。で、「南セントレア」という名前に一度は決まったのでした。——「セントレア」ってのは「セントラル」と「エア」を一緒にした造語。これは、この町の隣に中部国際空港ができてるんだけど、それの愛称がセントレア（うぷぷ・・）なんだそうで、それにちなんだわけだね。ところが、この「セントレア」って名前は、実は全国から募集した名前の中には一つも含まれていなかったんだという。つまり、名前を募集しておいて、実際にはそれらをまるっきり無視して合併協議会が「これがいい」と全く別の新しい名前を付けちゃったわけ。ということは、これは最初っから「募集した名前をつける気などなく、南セントレアに決まってた」ということだな。
ま、名前が決まる経緯に問題があるし、せっかく全国から募集したんだからそれを無駄にするのはあまりに情けない。だから、「集まった名前の上位のものと『南セントレア』（まだ諦めきれないらしい・・）の中からいいと思うものを住民投票で決める」という今回の決定は、まあ妥当なものだろうと思う。——僕が今回、いいたいのは、そういうことじゃない。それは、「全国から抗議が殺到した」という部分だ。
まず、「なぜ、とある町の名前を決めるのに、その町とは関係ないところに住む人間が抗議するのか」という素朴な疑問がわく。自分が住んでいるならわかる、だが行ったことさえない、今回の騒ぎがなければ一生知らなかっただろう町の名前にケチを付ける人間がたくさんいるということがよく理解できない。——更に、抗議の大半は「今までの歴史や文化と全く関係ない名前を付けるのか！」といったものだったという。そこのところも実はよくわからないのだ。つまりね、「なんで町の名前をつけるのに、歴史だの文化だのにしばられないといけないのか」ということが、だ。
そもそも美浜という名前は、「美しい浜に囲まれた町」という理由で昭和40年につけられた、歴史なんてものとはほとんど関係ない新しい名前だ。南知多（知多）に関しては、おそらく知多臣から由来すると思われ（違うかも知れないけど）、こちらはかなり歴史的な経緯がありそうな感じがする。だから南知多については「歴史的文化的うんぬん」というのはわかるけど、美浜などはそれ自体が歴史的にも文化的にもあんまり考えずに付けられた名前ではないか。美浜のときはそれでよかったが、南セントレアはまずいのか。「文化的歴史的」とかいうから話がややこしくなるのだ。「変な名前だから」——理由はそれだけで十分じゃないか。なんだってそこに文化だの歴史だのを持ち出すのか。だいたい、抗議をした人間は、美浜と南知多の名前の由来などまできちんと調べた上でいってるんだろうな？
日本にある地名、それらの多くは、実は歴史や文化とはあんまり関係ないものだったりする。例えば、「東京」。これはたかだが明治以降につけられた程度のもので、歴史を重んじるなら「江戸」のままにしておくべきだろう。僕が住んでいる千葉にしたところで、本来は上総、下総、安房といった名前であった。それなら千葉なんぞより今でもよく使われている「房総」のほうがあっている。日本の結構な数の県・市・町の名前は、明治以降に「それまでの歴史なんぞを踏まえないでてきとーにつけられた」ものだったりしないか。
そもそも、日本人はそんなに「歴史的な名前」を大切にする人間たちだったろうか。昨今の子供たちの名前を見てみればいい。日本人とは思えない、男か女かさえわからない、まともに読むことさえできないような名前を付けて得々としている親のいかに多いことか。日本の会社とは思えないカタカナや英語名の企業。インターネットにつなげば意味不明なハンドルや読み方さえわからない名前のWebサイトが氾濫している。日本人が名付ける固有名詞の大半は、日本の文化や歴史など屁とも思わないようなものばかりだ。そしてそんなものを「カッコイイ」「おっしゃれ〜」などともてはやす人間ばかりではないか。
本当に「名前は文化なのだ」というならば、南セントレアに限らず、あなたの名前、あなたの子供の名前、あなたが勤める会社の名前、あなたが作った製品の名前、そうしたあなたに関係するところからまず「その名前は文化的歴史的に見てどうなのか」と声を上げるべきだろう。自分とは何の関係もない、文句をいっても何も責任が生じない安心して文句をいえる相手だけに抗議するという姿勢が情けないじゃないか。本当に、あなたは心の底から「名前は文化だ」と思うのか？
・・まぁ、インターネットを「南セントレア」で検索すれば、山のように「南セントレアに反対、抗議する」というページが見つかるのはわかっております。世間一般の認識はそういうものだろうともわかっております。だから、あえてその反対の見方をここに書いておきたかったのでした。人の尻馬に乗って文句をたれているだけの人が偉そうにしている状況にちょっとカチンときたので、ね。天の邪鬼な考え方であることはよくわかっておりますよ。——だけど、「名前なんてものはただの符号だ。それ以上でもそれ以下でもないのだ」という考え方も世の中にはあるんだ、ということも知っておいて損にはならんでしょう。
公開日: 木 - 2月 10, 2005 at 11:46 午前