カリー三昧


年が明けて、カレー三昧の日々を送っていたりする。

我が家は、僕も嫁も(おそらくは娘も)「おせち」が大嫌いである。お正月だからといって、あんなたいしてうまくもないものを毎日食べないといけないなんて拷問だと思う。おせちは「お正月の間、女性たちを家事から解放する」ために考えだされたものなのだろう。ならば、もっと別な形でおいしくいただけるもののほうがよい。というわけで、年末に「デリー」という銀座にあるカレー屋さんのサイトを見つけ、そこのカレーをまとめて注文しておいた。そして年が明けてからカレー三昧の日々である。

デリーのカレーは、いわゆるレトルトではない。レトルトは高温で殺菌するため、どうしても味が変わってしまう。そこでデリーは低温殺菌をして味が変わらないようにしている。そのため、カレーはルーのみで具が全く入ってない(具があると高温殺菌しないといけないため)。なので、鶏だの野菜だの好きな具を炒めておいて、それにルーをあわせて作ることになる。——これが、「んまいっ!」のである。ほとんど、高級インド宮廷料理のレストランでないと味わえないような、実にいい味なのだ。そのへんのカレー屋など足下にも及ぶまい。

これだけインターネット通販でうまいものが手に入るんなら、他にももっとあるはずだ・・と、いやしんぼでは引けを取らないこの夫婦は考えた。そして夜中にあれこれと検索してみたのだけど、意外に「ちゃんとした味で通販できる」というところは少ない。たいていは、一般的なレトルトで、どうも味も期待できないような感じだったり、うまそうだけどやたらと高かったりして、手頃でおいしいというのはそうそう見つからない。

では、どうするか。——嫁の出した結論は、「じゃあ、作ろう」であった。さっそく今日、スーパーにいって、あれこれとスパイスを探してきた。ついでに、レトルトだけどちょっとおいしそうなカレーもいくつか買ってきた。まぁ、カレー屋が裸足で逃げ出すほどの味を作るにはかなりかかるだろうけど、我が家の味を作ってみるのもそれはそれで悪くない。

僕がうちの嫁を尊敬する一番のところは、たぶんこの部分なのだろうと思う。——娘が着る洋服も、生地を買ってきて作る。パンも、おいしいパン屋さんなどを一通り食べてみたら、「自分で作ってみよう」と言い出す。今日は今日で、娘と同い年の男の子の家に遊びにいくので、手みやげ代わりのクッキーを焼いていた。こういう衣食住という基本的なところでズボラな夫としては「ご苦労様です」とひたすらかしこまるしかない。

嫁は、たぶん自分ではそれほどたいしたことをしているとは思っていないに違いない。「だって、好きなんだから」というだけのことだろう。そうなのだ、好きなことであれば、黙って見ているだけ、黙って出来上がったものを受け取るだけでは満足できなくなる。自分でもやってみたい、作ってみたいと思う。僕も気がつけばちょこちょこと自分で稚拙なプログラムなんぞを作ったりするようになったのも、たぶん「好きだから」なんだろう。

だが、最近では「好きなことに手間を惜しむ」人が増えてきたような気がする。好きだけど「面倒くさい」からやらない。それがわからない。本当に好きなことを思う存分やれるのに「面倒くさい」って、どういうことなんだ? 本当に好きなことなら、一日中ずっと熱中しても足りないぐらいだろうに。面倒だなんて思う暇さえないだろうに。

好きなことであるのに「面倒」と思う、その程度の「好き」しか持っていないというのは、やはり不幸なのだろう。ともかくも「自分で作ってみたい」と思える、そしてそれをすぐに実行に移せるものを持っているだけでも、僕ら夫婦は幸せなのかも知れないな、と思うのでした。——さて、明日はドライカレー・ストロングタイプで決まりだな。

公開日: 月 - 1月 10, 2005 at 10:39 午後        


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