黙っていても金が入ってくる


・・そんな便利なものがあるなら、世の中、誰も働いたりはしない。そんな当たり前のことがわからん人がこんなにいるとは。

また久々にゴミ箱チェックをしていたら、ちょっと毛色の変わったゴミメールが届いていたらしい。それは「ディスカバリーネット」というやつ。最近、あちこちで見かける、いかにも怪しそうな在宅ワーカー募集のスパムだ。で、前々からどういうものかちょっと興味があったので、万が一を考えていろいろ危なそうな機能をOFFにして(笑)ホームページを見てみた。

一見したところ、そう怪しそうな感じではない。——と思いつつ読んでみたのだが、いくら読んでも「本部のマニュアルに従って業務をするだけ」と書いてあるだけで、肝心の業務内容が全く書かれていない。うーむ、怪しい。しかも、更に読んでいくと「初期投資:マニュアル代2900円のみ」とのこと。決定。ここは怪しい。

その後、検索してなんとなく仕組みが見えて来た。ディスカバリーネットに加入し、本部に紹介者のIDとともにマニュアル代を振り込む。するとマニュアルと称するものが届く、らしい。そしてそれをもとに業務を開始する。その業務の内容とは——ディスカバリーネットを宣伝すること! 本部と全く同じホームページを立ち上げ、あちこちの掲示板やブログに広告を書き込み、メールマガジンやスパムで宣伝する。それをひたすら繰り返していく。で、やってみようと思った人間が、自分のIDとともにマニュアル代を振り込むと、その代金の一部が収入として入ってくる、ということらしい。

真っ当な神経の持ち主なら、概略がわかった段階で「これは無限連鎖講だ(いわゆる、ねずみ講ね)」とわかるだろう。収入が確保されるためには複数名の新規加入者が必要であり、それを続ければいずれは破綻する。ねずみ講をやる人間は手を替え品を替え仕掛けを考えだす。こうしたところでは、「ねずみ講は法的にはこれこれこういう条件を満たしていなければいけない、従ってこれこれこういうシステムによる私どものやり方はねずみ講には当たらないのです」といったいいわけが必ず書いてあるけど、まぁこれが書いてあるという時点で「あ、ねずみ講だな」と思っていい(笑)。

それにしても、だ。調べて暗澹として来たのは、これらをやってる人間のサイトやブログが猛烈な勢いで増えている、ということだ。ディスカバリーネットに限らず、この種の「ねずみ講ではありませんというねずみ講サイト」というのがものすごい勢いで増えている感じがする。わからないのは、「この人たちは、本当にこれがねずみ講だとわからずに、合法的なビジネスだと信じてやっているのだろうか」ということだ。もし、承知の上でやっているならば犯罪者である(たとえ設立した側でなくとも、無限連鎖講であることを承知の上で他人に対し勧誘活動をすれば共犯とみなされ有罪となる)し、全く気づかなかったというなら、それは「バカ」としかいいようがない。

在宅ワークというのは、別に全部が全部怪しいわけではなくて、ちゃんとしたところもある。が、それはすべて「金銭を支払うべき業務を行なう」ことでお金が払われるものだ。どのような業務であれ、何らかの生産活動(有形無形を含めて)があるものだ。「そのサイトを宣伝する」ことが唯一の業務などという企業はあり得ない。何かの業務をしていて、その受注を増やすために宣伝するのであって、自分の会社の宣伝そのものが業務のすべてなどということがあり得るわけがない。また、宣伝のために、あちこちの掲示板に宣伝を書き込んだりスパムメールを送信したりということを「業務」であると思える神経も理解できない。自分たちのコミュニケーションの場として設置している掲示板などに匿名の人間がこの種の広告を書き込んでいくということがどれだけ不快感を与えるものか想像すらしたことがないのか。

検索していたら、「勝手に稼ぐパソコン」なんてものまで出て来て絶句してしまった。1万円を振り込めば、勝手に稼ぐパソコンのノウハウをお送りします、という。その概要はといえば、「これと同じサイトを作って、『勝手に稼ぐパソコン』の宣伝をする」というものだったりする。バカじゃないかと思うのだが、これを信じて始める人間が後を絶たないのも事実だったりするのだ。こういう人間は、「自分のやろうとしていることは犯罪である」ことをどこまで自覚しているのだろう。「金さえ儲かれば、そしてつかまりさえしなければ違法なことをしてもかまわない」という人間が増えているのだろうか。

何もしなくてもお金がざくざく入ってくる。そういうことが不可能なわけではない。事実、そういう人間もこの世の中にはいる。だが、そうした人間は、すべて「大金持ち」だ。金が勝手に金を生むには莫大な資金が必要である。この種のビジネスを「本当だったらやってみようかな?」などと思っている人へ。この世に「貧乏人が勝手に金を稼げるシステム」など存在しません。黙っていても金が入ってくる暮らしがしたいなら、まず、死にものぐるいで働いて金を貯めなさい。


警察庁 インターネットトラブルの対策ページ
http://www.npa.go.jp/nettrouble/index.htm

公開日: 火 - 11月 23, 2004 at 03:17 午後        


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