マイブームの歌?
我が家で現在、ブームとなっている歌。それは、「ドレミノテレビ」の歌であります。
「ドレミノテレビ」ってのは、NHK教育でやってる子供向けの番組であります。これをハードディスクに録画して、しょっちゅう流してる。この中の「ドレミミズンド」とか、UAの歌ってる「てのひらを太陽に」なんかやってて、よく親子で踊っております(笑)。
が、最近のブームは、これらではないのです。その中でUAが歌ってる「シャローム」というイスラエル民謡なのであります。——これは、すごい。最初に流れたとき、夫婦揃って「ぴたっ」と動きが止まって、「な、なにこれ?」と思わずテレビを振り返って見てしまったぐらいに、すごい。といっても、派手な演奏でも、目を引く(耳を引く?)メロディというわけでもないです。ひどく素朴な、静かな、悲しい歌。が、全身鳥肌が立ってしまうぐらいに、なんともいえずに心を揺さぶる歌であります。
音楽ってのは、もう日常に溢れていて、僕らはたいていのものには慣れっこになってる。どんな大音響の歌でも、激しいリズムでも、シャウトする声でも、みんな右の耳から入って左の耳から出て行ってしまう。それなのに、こんなにもシンプルで何一つ飾らない「シャローム」が、こんなにも心に残るのはなぜなんだろう。それは多分、感動とかいったものというのは、技巧とは別のところにあるからじゃないだろうか。
折しも、昨日の晩はアマゾンにDVDを注文するので夫婦して映画のタイトルを検索していたのだけど、そのときに「ああ、これ見てみたいねえ」と二人して思うのは、ロベール・ブレッソンなどの素朴な映像の作品ばかりだったのでした。「ハリウッドの映画が浜崎あゆみだとしたら、ブレッソンの映画はシャロームなんだね」というと、嫁は大きくうなずいて納得しておりました。その道のプロが集まって才能と技術を集約して作り出したものが、必ずしも人に感動を与えるものであるとは限らないんだよね。ショパンコンクールに優勝したピアニストよりも、フジコ・ヘミングのピアノの方が人の心を打つのはなぜなんだろう。
感動するというのは、「相手の心に届く言葉を持っている」ということなのだろう。それは多分、技術とか才能とかとは別のものなんだ。——そして重要なのは、「受け取るこちらも、届けられた言葉を理解する耳を持っている」ことだ。どんな作品であっても、そこから様々なものを感じ取る人もいれば、何も感じない人もいる。受け取る側が鈍感であれば、どんな作品の声も届かない。感動っていうのは、作品の送り手だけでも、受け手だけでも成立しないんだ。
人それぞれ、何を感じるかは違うだろう。ただ、少なくとも「何事にも無感動な人間」より、「何事も素直に感動できる人間」のほうが、人生はちょっとばかり豊かに違いない。願わくば、我が子がそんな人間に育ってくれますように。
公開日: 木 - 3月 11, 2004 at 06:17 午後