間違った判断に反するのは間違いか?
セグウェイの輸入会社社長が、許可なくセグウェイを公道で走らせて書類送検されたとのこと。だけど、果たして「間違った判断」の元に「間違っている」と指摘された行為は、間違いなのだろうか?
セグウェイ。あったねそういうの(笑)。「世紀の発明」といわれて登場しつつも、いっこうに世の中を変える気配のない大発明品であります。これの輸入販売会社の社長が、許可なく原宿の通りを走らせたということで書類送検されたそうであります。そのニュースが、なんというか「お騒がせ人間」といった感じがして、ある意味滑稽なニュースといった伝え方だったのを見て、考えてしまったのでした。
この社長、知ってます。神田さんという人。以前、「KNN」といってMac関係のニュースレターなどを発行していたりして、Macの業界では割と知られた人です。いかにも関西人なノリの人で、「面白ければなんでもオッケー」なところのあるファンキーな人物であります。——彼は、その前にこういっておりました。
「セグウェイを日本で走らせていいとも決まっていないし、悪いとも決まっていない。いくらそういう役所なんかにかけあっても、たらい回しされるだけ。こうなったら、実際に走らせて、取り締まらせて、『どういう罪状で、なぜ悪くて、どういう問題があるのか』をすべて聞くしかない」
つまりは、確信犯だったのだと思う。実際に事件を起こせば、否が応でも法的判断は出る。そこで、「セグウェイは日本で走っていいのかいけないのか」が明確になる。なら、走らせて捕まってやろうじゃないか。そういうことだったんだろう。
彼のしたことは、悪いことである。だが、ここで非常に重要な問いかけがなされていることを見逃してはいけない。「その行いを『悪い』と判断したシステム自体が間違っていた場合、その行為は『悪い』のか」ということだ。——「悪法も法である」といって毒をあおったのはソクラテスだった。確かにソクラテスの言葉は正しい。が、そういって黙って死んでいったのでは、その後も悪法によって何人もの人間が死んでいくことを肯定することになってしまう。それは果たして正しいのだろうか。
今日、こんなニュースも報道されていた。「日本ハムの不祥事を内部告発した西宮冷蔵が営業を再開」。西宮冷蔵は、日本ハムの牛肉偽装事件を内部告発した会社だが、次々と取引を打ち切られ営業停止に追い込まれていた。それを、「悪いことを悪いと告発した会社がつぶれるのは間違いだ」と市民が募金活動などして資金を集め、営業再開に至ったという。——西宮冷蔵は、この業界において「裏切り行為」を行なった会社だ。いわば、この業界においては「悪い」ことをした会社だ。だが、その業界のシステム自体が間違っていた場合、果たしてこの会社の行いは悪いのかどうなのか。
法だとか社会とか、そんな大掛かりなことは関係ない、と思う人もいるかもしれない。けれど、これは「システムの大きさ」とは関係のない問題だ。——例えば、「家庭」というシステムや、「自分自身の価値観」といったシステムでも起こりうる。自分の価値観に反するものは「悪い」ものだ、人間はついそう思ってしまいがちだ。だけど、「果たしてその価値観に誤りはないのか?」という問いかけを僕らは行なっているだろうか。
何が悪いのか、何が正しいのか、それを考えるとき、同時にまずその前提を疑ってみるべきだ。このことを神田さんは伝えたかったのかもしれない。彼らしく、いかにもファンキーなやりかたで、ね。
公開日: 土
- 2月 7, 2004 at 06:49 午後