フロッピーディスクの発明者
バラエティだからって、そこまで無茶いっていいのか?
土曜日の夜、風邪でぼ〜〜〜〜っとしてたときのことだと思う。テレビでは、前に録画してあった「伊東家の食卓」が流れてた。風邪薬が効いて来て、うつらうつらとしながら、足下にまとわりついてくる物体(多分、娘)をじゃらしつつ、何の気なしにテレビの音を聞いてた。すると。
「今回のなんたらかんたらは、フロッピーディスクです。皆さん、フロッピーディスクの発明者は誰だか知ってますか?」
「はい、あのドクター中松なんですよ」
「えええええ?!」
一瞬で眠気が去りましたよ、ええ。「っておい、今、何ていった?」という感じ。何かのジョークなのか?と思ったけど、番組はそのままドクター中松の写真なんかを出したりしてそのまま先へと進んでおりました。——おいっ。これじゃ、見た人、ほんとに「ドクター中松がフロッピーディスクを発明した」と信じてしまうぞ。いいのかそれで!?
彼が発明したのは「ナカビゾン」という、磁気媒体を使って音楽を記録再生する装置であってフロッピーディスクではない。フロッピーディスクの特許を持っているのはIBMである(3.5インチは確かソニーだったかな?記憶が曖昧)。IBMがフロッピーディスクの特許を日本で取る際に、ある種の関連特許としてドクター中松氏とパテント契約をした、というようなことであって、フロッピーディスクの発明者は断じてドクター中松ではない。彼が、そう主張しているだけなのだ。——「でも、ナカビゾンってフロッピーディスクの元祖みたいなものでしょ?」などと思わないで欲しい。そりゃああまりといえばあまりだ。「ハードディスクの元祖はエジソンの蓄音機だ」というようなもんである。筋道をず〜〜〜っと辿っていけばそこにたどり着くかも知れないけど、ふつー、そこまで離れれば「無関係」と思うもんだ。
ドクター中松は、押しが強い。あちこちのメディアに露出して、あれこれと顔を売っている。そういう人間が「オレが発明した」と言いふらしていれば、そりゃあ信じる人間もいるだろう。だが、だからこそメディアの情報番組や掲載記事では、誤りがないように細心の注意が必要なわけじゃないか。フロッピーディスクの特許は誰が持っており、その関連特許はどうなっているか、調べればすぐにわかることだ。いくら「伊東家の食卓はバラエティだから」といっても、ある種の情報番組の顔を持っているのは確かだ。だからこそ、そこで報じられたことは「本当のことだ」と誰もが信じてしまうんじゃないか。
中松氏が「フロッピーディスクはオレが発明した」といいはるのは、別に罪ではない。発明は、本人が「オレが発明した」といえば、否定することはできない。ただし、特許は違う。国が管理しており、調べれば一発で詳細がわかる。フロッピーディスクの特許は、ドクター中松ではなくIBMである。そのぐらい、番組中に補足しておきなさい。頼むよほんと。
公開日: 月 - 12月
13, 2004 at 11:00 午後