せこい喧嘩
なにもそんな重箱の隅で相撲をとるようなことしなけりゃいいのに、NHKとフジテレビ。
どうも最近、メディア関係のうすらみっともない話を耳にすることが多い。——まずは、NHKと朝日新聞の間のごたごた。朝日新聞が内部情報として「NHKが番組への圧力で内容を変更した」というようなことを報道したら、NHKは内部調査でこの情報提供した人を捜し出してしまい、その本人が「朝日にはそんなこといってない」と公表してしまったからさあ大変。朝日は「いや、こっちはちゃんと取材して確かな情報として報道した」といいはるし、NHKは「朝日は誤りを認めて謝罪しろ」というし、かなり泥沼にはまってる感じだね。
個人的な意見でいわせてもらえば、これは明らかに「朝日の負け」である。いや、どっちの言い分が正しいかではなくてね、「秘密裏に情報を提供してくれた人間」がバレてしまった時点で、負けなのだ。報道機関は、その情報源となる組織や人間を死守する義務がある。なにしろ内部告発だ。「こいつがいった」とばれちゃった時点で、その本人としては「いや、NHKに不利なことなんて何もいってないです」というしかない。本当はどうかなんてこの際関係ないのだ。守りきれなかった時点で朝日は負けなんだから。
が。そういうところで喧嘩しているなら別にどーってことはない。どっちも頑張ってやり合いなさい、としかいいようがない。ところが、報道の根本に関わるようなところでなく、ろくでもないようなところで喧嘩をし始めるのだから困ったものだ。——NHKは、ラグビー選手権の試合で、選手のジャージに朝日新聞のロゴが入っているのをめざとく見つけて「生放送しないで深夜に録画放送する」と放送内容を変更してしまった。朝日は「そんなことはスポンサーとして契約してる段階でわかってることだろうが」と反発する。NHKは「でもうちは企業名とか映さないのが方針だもんね」と突っぱねる。ところが、これを発表したところ、全国のラグビーファンから猛烈な抗議が来て、結局、生放送することに戻っちゃったという。
似たようなことは、ライブドアとフジテレビの間でも起こってる。ライブドアがニッポン放送の株を大量に取得し、あわよくばフジテレビへ経営参画しようとしてるのに腹を立てたフジテレビが、ライブドアの堀江社長が出演する「平成教育2005予備校」ってバラエティ番組を放送休止し、更には番組のレギュラーから堀江社長を降板させたそうだ。フジテレビは「制作側がなんかの都合でそう判断したんで、別に会社でそうしろって決めたわけじゃない」といってるが、んなわけねーだろ。フジテレビが堀江社長に嫌がらせしてることぐらい小学生にだってわかるぞ。
メディアが何かの喧嘩をすること自体は大変良いことだと思う。戦おうとしないメディアなぞ存在価値がない。が、なんなんだこのみみっちい喧嘩は。あまりに視野の狭い、あまりに子供じみたやり方を見てしまうと、「こんな連中がこれほどの巨大メディアを運営していて大丈夫なのか?」と思ってしまう。——僕がフジテレビの関係者なら、堀江社長を降板などさせず、逆に「堀江社長が語る、誰でもできる企業買収! 私はこうしてフジテレビを乗っ取った」とか番組にしてしまうだろうに。ウケるぞ〜、きっと。そのぐらいの度量があれば、見る方も「さすが天下のフジだな」と思うだろうに。
なんというのかなぁ、最近、人々の気持ちの上での余裕というのがなくなりつつあるな、と思うのだ。それは個々人ということだけでなくてね、こういう会社や組織についてもそういう視野の狭さ、懐の狭さを感じることが多くなった。その昔の企業人というのは、テーブルの上ではにこやかに握手をしながら、そのしたで足の蹴り合いをしている、みたいなことを平気でやってのけた。少なくとも、こんなふうに衆人環視の中で泣きながら両手をぐるぐる回して殴り掛かるようなみっともない真似はしなかった。
NHKも、朝日新聞も、フジテレビも、ずいぶんと喧嘩が下手になった。メディアたるもの、つまらぬことで感情的にならず、もっと冷静に幅広い視野を持って戦いなさい。どう見ても、ライブドアの方が大人だぞ。
公開日: 木 - 2月 17, 2005 at 02:35 午後