死の高校野球


・・が、始まったらしい。すべての出場選手たち、がんばらないようにね。

そういえば、気がつくと「夏の甲子園」というやつが始まっているらしい。全然、興味ないから知らなかったんだけどね。——でも、世間的には甲子園というやつは今でも健在のようで、世の多くの人が、この半月ほどの間だけ突然熱烈な地元愛に目覚めて応援をしまくるようだ。

個人的な経験からなのかも知れないけど、僕はこの高校野球というやつがどうも好きになれない。「なんで? 毎日、汗水たらして練習して頑張っている、立派な若者たちじゃない。なんで応援してあげないのさ?」と思うかも知れない。では、そうした人に聞きたい。「頑張っているのは、野球部の部員だけなのか?」と。それ以外の頑張っている若者も、あんたはちゃんと応援しているのか?と。

まるで野球部の人間だけが頑張っているかのような今の高校野球がキライである。——僕は高校時代の3年間、マンドリン部に所属していた。うちの高校は運動系がすべてダメで、文科系がかなり活発に活動していて、我がマンドリン部も定期演奏会や、県の連合音楽祭などでずいぶんと頑張ってきた。日曜祝日であっても練習に休みはなく、「盆暮れ正月以外は毎日練習」みたいなところだった。——それなのに、部員もおらずほとんど活動もせず、地区大会の直前に他の部から運動神経の良さそうなのを引っ張って来てなんとかチームを作って出場し、一回戦で負けるような野球部の方が「地元の誇り」とされるのだ! こんな理不尽なことがあるか?

なまじ「勝つことが母校の名誉」なんてことになるから、この日中は40度にもなろうという炎天下に毎日毎日エースは連投し、プロ入りした1年目に肩を壊して引退なんてことになるのだ。頑張っている野球部員も、それ以外の部の人間も、いいことなんて何もない。喜んでいるのは、出場する母校の関係者と地元の(学生とは無関係な)ファンだけではないのか。

もし、本気で「頑張っている彼らを応援するんだ」と思うのであれば、現在の肉体を壊滅的に痛めつけるような大会をなくすよう尽力すべきじゃないのか? 彼らのためを思えば、9回を一人のピッチャーで投げるような試合を連日やることがどれだけ彼らの害になるかわかるだろうが。「1日、3イニング以上投げない」「一度投げたら2日間は投げてはいけない」「変化球の禁止」といったことぐらい考えないで、「高校野球を応援する」などといって欲しくない。「それじゃあ面白くない」と思うなら、あなたは既に「彼らを応援」などしていない。自分の楽しみのために、彼らを利用しているだけだ。

一部の注目される人間にだけ過度の期待をかけ、それ以外にはどんなに頑張っていても一顧だにしない。そういう現在の「高校野球一極集中」が続く限り、僕は高校野球なんて見ない。全国の高校野球のファンの皆さん。高校野球からプロ入りし、すぐに体を壊して一軍から消える選手を見たら、「オレたちが、彼を壊したのだ」と、せめて心中詫びてやって下さい。

公開日: 月 - 8月 9, 2004 at 07:17 午後        


©