世間の常識・我が家の非常識


水戸黄門って、悪い人だよね? そう思う人は、いないのかなあ。

「水戸黄門」で思い出した(笑)。——ねえ、水戸黄門って、いい人だと思う? どうもそうは思えないんだよね。我が家では、水戸黄門は「怖い存在」として評価が定着してるんだけど、そう思う人はいないのかなあ。

水戸黄門は、要するに「自分の権力を振りかざして勝手に人間を裁いて回る人」なんだよね。なぜ水戸黄門が「正義の味方」なのかといえば、それは「たまたま黄門様本人がいい人だった」からに他ならない。でもね、江戸時代、常に「先の天下の副将軍」だった人間はいたわけで、そういう人間は常に同じ権力を持っていたはずなんだ。——黄門様以外の「先の天下の副将軍」も、みんな全員善人だったんだろうか。黄門様だけが名前が残っているということは、それ以外の人間は全て「いい人ではなかった」んじゃないだろうか。

考えてみて欲しい。水戸黄門で、黄門様が「悪人」だった場合のことを。江戸時代の長い歴史の間、おそらく黄門様の地位にある人間が悪人だった期間は、善人だった期間よりはるかに長かったことだろう。水戸黄門のドラマを見ると(っていうか全然見てないけど)、そういうことを考えてしまうのだ。「この人は、奉行所に送ることもなく自分で勝手に『お前が悪い』と裁いて、場合によっちゃ殺しちゃうんだよな」「黄門様が本当に善人だったのか、わからないよな」——そう思いながら見る水戸黄門は、きっとものすごく怖いと思う。

まあ、水戸黄門をそこまでまじめに見てる人なんていないんだろう。どーせ娯楽時代劇なんだしね。でも、これがNHKの大河ドラマだったりすると、とたんにクレームとかがくるわけで。今年の三谷さん脚本の「新撰組!」なんか、ずいぶんと叩かれてるみたいだね。僕なんかは最初から「嘘八百で作ってる」と思って楽しんでるから面白いと思うけど、そういうことを嫁にいったら彼女は「絶対、これが真実だと思って見てる人いるよ」と断言していた。そうなんだろうか。そうなんだろうな。そして番組を見て、新撰組をどこか美しい青春群像のように思ってあこがれてしまう人間はたぶんたくさんいるのだろう。

新撰組は、幕末最悪の殺人集団である。水戸黄門は、庶民をその場で生かしたり殺したりできる大権力者である。そういう視点をどこかでもっておくことは重要だと思う。少なくとも、それが「我が家の常識」となるようにしたいな。

公開日: 日 - 4月 4, 2004 at 05:26 午後        


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