そんなに社員は悪いのか?
社員はボーリングもおちおちできないのか。それが当たり前なの??
JR西日本の事故の波紋が更に更に広がっている。今度は、事故の当日に、職員43名が休暇を取ってボーリング大会をしていた、更に終ってから宴会まで開いていた、というのがバッシングされてますね。そのうち、13名は死者の出る事故が起こったことを知っていた、というので、あちこちから批難の声が上がっております。——少し前には、事故の列車にJRの運転士2名が乗っていたのに、救助に加わらずそのまま出社したというので処分されたとのこと。(ところがこの運転士たちは上司に電話で連絡をして「そのまま出社しろ」といわれていたことが判明。今度は、その上司が処分されるとかされないとか)
・・なんというのかなぁ。でっかい批難を覚悟していおう。死亡者の出る事故が起こった日に、その会社の社員が休暇を取ってボーリング大会したらいけないんですか?? なんで?? それがわからない。事故が起こったこと知っていながら、それからわざわざ早退してボーリングしにいったらそりゃ問題だろう。だけど、それ以前からみんなで予定を立てていて休暇届も出しておいたわけでしょ? それで、事故が起こったとは知らずにみんなでボーリングしていたわけでしょ。途中で電話で知らされた人もいるということだけど、そんなにいけないことなのかボーリング大会。
そもそも、事故が起こった当初というのは、ニュースにしても「列車が脱線し、死傷者が出た模様」という程度の扱いであったはず。死者が次々と見つかり、史上空前の大列車事故だったことがわかってくるのはかなりたってからだったはずだ。今でこそ「こんな大事故が起こったのに」ということはできるが、事故直後の段階ではそんなことはわからなかったのだ。そういう状況下で、果たして「今、ボーリング大会をしているのはまずい」と思えるだろうか。もし、自分がその立場だったら、「あれ〜、ちょっと心配だよね。部長に電話しとこうかな?」ぐらいで終わりだったろうと思う。そうじゃない?
ボーリング大会には参加しなかったけれど、その日、休暇を取って家族で万博にいっていた社員がいたらどうなっただろう。「こんなときに家族サービスなんかするな」と処分されるのだろうか。家族サービスはいいけど、仲間でボーリング大会はいけないのか。じゃあ「大会」でなく、友達と数人でボーリングしてた場合はいいのか。家でごろごろしながらテレビを見ていた場合はどうなのか。ボーリング大会の最中に火災が発生してみんなで手分けして避難誘導を手伝い消防署から感謝状が出たりしていたら、この人たちは褒められたのか批難されたのか。そういうことをいろいろ考えてしまうのでした。
「その会社で不祥事が起こったのだから、社員は全員××べきである」的な感覚が、キライだ。「その会社に所属する人間はすべて会社の従属物」と見る感覚がイヤだ。だいたい、常日頃は「労働者は会社の奴隷ではない、もっと休みを取るべきだ、そういう体制を整えるべきだ」とかいっておきながら、いざ事故が起こったりすると、きちんと休暇をとって休んでいた人間を人非人扱いする。その一事を殊更にとりあげて会社や従業員を批難する。悪役と決まった人間たちの行動を重箱の隅をつつくようにして探し出し糾弾する。そういうのが大キライだ。
日頃、リベラルなご立派なことをいっている人間でも、いざというときになると途端に旧態依然とした古めかしいことを持ち出して叫ぶ。——社員は会社の奴隷ではない。社員は、契約により労働力を提供し賃金をもらっているだけであり、会社のために身を捧げるいわれなど全くない。そういう理屈はわかっているのに、いざ「事故が起こったときに休暇を取ってボーリング大会をしていた」というと「社員でありながら・・」という。「JR西日本の社員なのに不謹慎だ」「休みを返上して会社や現場に駆けつけるべきだ」という。駆けつけたからといって別に何ができるわけでもなく、待機と称してぼーっとしていたとしても、それはそれで立派と言われる。
「社員なら責任を感じないのか?」という。JRの社員だと言うただそれだけの理由で、あの事故に対し、責任を感じないといけないのか。もちろん、事故を起こした列車やその路線の運行に関わっていた人間やその責任者たちは責任を感じるのは当然だろう。だが、全く別の路線を担当する人間まで、まるで自分たちに何かの責任があるかのように振る舞わなければいけないのか。ただ「社員である」というだけで。
何か大事件が起こってみんなの力が必要になったとしたら、もしその現場にいたのなら、その会社の社員だろうがそうでなかろうが協力するのは当たり前だろう。そして社員であろうとあるまいと、「その場にいなかった」ことをもって批難するのは筋違いだろう。そう思うのは間違いなのか。「社員である」とは、そんなにもでっかい責務を負うものなのか。
JRにも、今回の事故に関し、全く何の責任も負わない社員はたくさんいるだろう。そして、そうした人間が、無意味に責任を感じる必要はないはずだ。そうした人間に対してまで何らかの責任を負わせようとするのは間違いだ。——世間が「みんなでJRを叩け!」といわんばかりの風潮となりつつあることを感じる。それが当たり前という空気を感じるにつけ、どこかで疑問符を投げかけておかなければいけないと思ったのでした。JR西日本の社員の皆さん。社員であるというただそれだけであなたが悪いとされるいわれは全くない。胸を張って働いてください。
公開日: 木 - 5月 5, 2005 at 05:23 午後