とんがってる??


エアロスミスが新アルバムですって。この、不良老年どもめが。カッコイイぞ!

エアロスミスっていったら、僕なんかが若い頃には既に大御所だったロック界のビッグネームだ。それが、新聞に一面広告で新アルバムのリリースだそうだ。で、その広告に出ていた写真が、またすげーの。嫁なんかは「この一番左端の人、怖い〜」とビビるぐらいに悪そうなジジイたちだ。どいつもこいつも、温和な顔のやつは一人もいない。性格だけでなく、体型も、丸くなったやつは一人もいない。みんな、ガリガリか筋肉質だ。中年太りという言葉はこいつらの辞書にはないらしい。

エアロスミスにしろローリングストーンズにしろ、もう「おっさん」をすぎて「じいさん」の歳になろうってのに、全く丸くなろうとせず、とんがってるところがすごい。もう、こういう連中は貴重なのかも知れない。歳をとっても頑張っている人たちはいるけれど、その大半は中年太りの腹を抱えて、柔和な微笑みを浮かべてとっても心やさしく生きてらっしゃる皆様方ばかりだ。海外ではまだエアロスミスのようにとんがった連中がいるけれど、日本ではみんな年をとると丸くなってしまう。日本のロッカーでいつまでもとんがってるのは内田裕也ぐらいになってしまった。

若い頃、どんなにとんがってた人間も、結婚して子供ができて年をとれば自然と丸くなる。これは、自分自身がまさにそうだからよくわかる。若い頃からすれば信じられないぐらいに温和な人間になってる(ほんとよ、ほんと)。人間ってやつは、家庭を持ち、財産を持ち、名誉を持ち、地位を持ち、いろんなものを持ってしまうと、新しいものを手に入れようとするよりは、今あるものを守ろうとしてしまうもんだ。

人は、「これなしでは生きていけない」というものが増えるほど、これに反して不自由になっていく。——これは、僕が常に自身に言い聞かせている格言の一つだ。持っているものが増えるほど、動きは鈍くなる。何もないときは身軽だが、たくさんのものを持ってしまうとどうしても重くなってしまう。もう自由には飛べなくなる。——だが、それが悪いことであるわけじゃない。飛ぶ自由の代りに別のものを得た、というだけのことだ。得たものが、飛ぶことよりも遥かに大切なものであることだってあるだろう。

だがね。いや、だからこそ、か。飛べなくなったからこそ、年老いてもなお、身一つで空を目指す野郎に、僕らは幾ばくかの思いを込めるのだ。——世の中には、そうして「人々の失ったものを託された人間」というのがいる。プロ野球選手やサッカー選手、ミュージシャン、芸術家、そうした人々。彼らは、僕らが失ったものを託されて生きているのだ。どうかそのことを忘れないで欲しい。だからこそ、すっかり丸くなった多くのロッカーを見ると、僕はこう叫ばずにはいられないのだ。

ロッカーが、なに丸くなってやがんだっ!
とんがれよ、とんがれっ!

公開日: 土 - 3月 20, 2004 at 06:20 午後        


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