あらすじ本がなぜ売れる?


今朝、新聞を見たら、変な本の宣伝が出ていた。
しかも、パート2。パート1は売れてるらしい。うーむ。

その変な本というのは「あらすじで読む日本の名著」ってやつ。——昨今、日本語本というか、日本語のよさ、美しさをとりあげたような本がけっこう売れてるけど、その流れで、柳の下にはなんぼでも泥鰌がおるわいと思って出したんだろうか。前に本屋にいったときにちらっと見たんだけど、なんというか本当にただあらすじだけがずらずら並んでいて、「これで、どーせえっちゅうねん」といった感じだった。それが、好評につき2が出るっていうんだからねぇ。

そりゃ、本のあらすじを知りたい時、ありますよ。どんなもんかね。でもそりゃ、本の裏表紙に書かれてるの程度で十分でしょ。本屋に行って本を手に取ればいいわけで。なにも「あらすじ集」なんて作って売る意味がねーじゃん。と思ってたんだけど、売れてるってことは、そういうのを「これはよい!」とか思う人がいっぱいいるってことだろう。

思うに、みんなそこに紹介されている「日本の名著」なんて読みたくないのだ。読みたくないけど、常識としてどういうものかは知っておきたい。恥をかかないように。で、あらすじ本が売れてる——ってことでないだろうか。腰巻の宣伝文句とかを見ると、「読み損ねたあの作品も、夢中になったあの物語も、これ一冊で網羅できる!」あらすじを網羅してどーするっちゅうねん。読めよ。読め。

名著ってのは、つまり多くの人が読んで「すばらしい!」と思ったから名著なわけで、それを読まずにあらすじだけ頭に入れてなんか意味があるもんだろうか。「これを読んで、面白そうだから読んでみようと思う」ってことだろうか。

・・ん、待てよ。なんかちょっとわかった気がする。この本を書いた人たち(どっかの学校の校長が中心になって、そこの先生方が書いたそうだが)は、読書を「勉強」と思ってるのだ。たぶん、「楽しみ」と思ってる人たちが書いていないのだ。そういうことじゃないだろうか。なんか、小中学生ぐらいの頃に、えらそーな先生たちに「夏休みの課題図書」とかいって「お前ら、このぐらいの本は読んでおけよ」とか頭ごなしに怒鳴られた、その頃のにおいがぷんぷんする。

この本を書いた先生方。あなたがたは、本当に読書の楽しみを知ってて書いてますか? この本は明治から昭和にかけての日本の名著を選んだそうだけど。じゃあ、押川春浪の「空中戦艦」は読みました? 江戸川乱歩の「芋虫」は? 谷譲二のメリケンジャップ・シリーズは? かの「大菩薩峠」を全部読破しましたか? まさか吉川英治の「鳴門秘帖」も読んでないってことはないですよね? ひょっとして、そうした多くの名作の中から選りすぐって「これらこそ名著だ!」というのを選んだわけではなくて、学校で「これが日本の名著」とされているものをただ機械的にピックアップしたってことはないよね? ちゃんと読んだんだよね? 読書が好きで、たくさんの本を読んでいて、それで「どうしてもこれらは紹介しないと!」と思ったんだよね? 違うの? どうなの? そこんとこ、はっきりしてよ。

これは中学生高校生に読んで欲しいと書いたらしいけど、彼等は「じゃあ読んでみよう」と思わないよ。若い連中はね、そういう「大人の嘘」が大嫌いなんだから。

公開日: 日 - 11月 2, 2003 at 10:17 午前        


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