子供は退屈しない・・の?


やっとテレビでニュースを見られるようになった。それというのも、テレビを見なくなったからだ。・・ん?

ほんっっとうに久しぶりに、テレビでニュースを見られた。——前にちらっと書いたけど、うちの娘は「おかあさんといっしょ」などのお気に入りの番組でないとすぐにかんしゃくを起こす。ニュースステーションなど見ようものなら10分で泣き出してしまうのだ。そんなわけで、やむなくパパは一人仕事場でインターネットでニュース映像などを眺めていたのであった。

それがなぜ見られるようになったのか、といえば、それは「テレビを見せなくなった」からである。というと、なんだか逆説的だなぁ。——現在、1歳半になる娘は、まだ言葉がほとんどでない。1歳半ぐらいになると、もう4つ5つぐらいの単語を覚える子はざらのようで、ちょっと娘は遅い方かなと思うのだけど・・。先日、嫁がインターネットであちこち調べているうちに、「やっぱり、テレビを付けっぱなしだと、言葉覚えないみたいよ」というので、しばらく日中はテレビを付けないでいこう、ということにしたのだ。とーぜん、火のついたように泣きわめく娘と嫁のテレビを巡る壮絶なる戦いを予想していたのだが・・。

娘は、別にわめくでもなくふつーに一人で遊んでいたらしい。まあ、お腹がすいてきたり眠くなったりするとぐずりだすけれど、「テレビを見せろ!」とぐずることはほとんどなかったようだ。というわけで、拍子抜けするぐらいに簡単に「テレビなし生活」ができてしまった。——「これなら、ニュースとかを見ても泣いたりしないんじゃない?」というので試してみたところ、CMなんかでは振り返ってみたりしていたけれど、ニュースの最中は別にテレビを見るでもなく一人でふんふんと遊んでいる。別に「他の番組を見せろ」と意思表示することもない。

結局、最初からテレビを付けていて、途中で消したり他の番組に変えたりすれば烈火の如く怒るけれど、最初からテレビなんてついてなければ、それなりに他のことをやって遊んでいるのだ。「これがなきゃ・・」と思い込んでいたのは、実は親の方だった。子供は、なきゃないで他に楽しみを見つけるものなんだな。前にチャンネルを変えて泣きわめいたのは「テレビが見られない」からではなく、「現在の楽しみを途中で取り上げられた」からなんだ。最初から別の楽しみを見つけて遊んでいれば、それはそれで楽しく過ごせるのだ。

そう考えて何となく思い出した。——子供の頃って、「退屈」ってことを知らなかったような気がする。雨で一日中家の中だったりしても、退屈したってことは記憶にない。何かしら楽しいことを探し出していたような気がする。高校ぐらいまでそれは続いた。部活が朝から晩まであったせいもあるだろうけど、「暇だ・・」と思う時間など、せいぜい授業中ぐらいしかなかった。

成長し、いろいろなことを知り、なんとなく世界のだいたいのことを知っているつもりになってくると、退屈をするようになるんだろう。「ああ、それはもう知ってる」「それは別にやってもつまらない」「それは面倒くさいからイヤだ」というようにしてあれを排除し、これを遠ざけ、そして「あー、やることがない。面白いことがない」と思うようになるのだろう。

高校生ぐらいならまだしも、今は小学生ぐらいで「退屈」している子供がいるらしい。情報だけはやたらと入ってきて、あっという間に耳年増な子供ができあがってしまうんだろうか。なんでも「そんなの知ってるよ。別に面白くもないよ」と遠ざけてしまうようになっちゃうんだろうか。——頭で知っていても、体は知らないことってある。鬼ごっこやかくれんぼだってそうだし、野球やサッカーだってそうだ。頭で知っていても、実際にやってみなければ何も知らないのと同じだ。運動関係ばかりの話じゃない。例えば、プログラミングなんてのもそうだったりする。本を読んで頭で理解しても、実は何もわかっちゃいない。ひたすら自分でプログラムを書いて初めてわかる世界なのだ。

実は、世の中の大半のものは、そういうものなんじゃないか。頭でわかっても実は何もわかっちゃいない。体で経験して初めてわかる世界。——だけど、大人になるに従い、知識として理解することが「わかる」ということだと思い込んでしまう。頭で理解すればそれでおしまいだと思うようになってしまう。そして草野球すらしたことのない人間がイチローのプレイを「今年のイチローはバットの入り角度が甘くてね・・」などとえらそーに解説するようになるのだ。

テレビは、情報だけを届けてくれる。が、情報を蓄積すれば「体験」に変わるわけじゃない。——しばらくは、娘には「頭だけに詰め込んでおく情報」なんていらないだろう。なにしろ彼女は、現在、あらゆることを体験するのに忙しくてそんな暇などないだろうから。

公開日: 水 - 4月 14, 2004 at 04:10 午後        


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