話を聞かない人間


なぜ相手の話を聞かないかといえば、それはどこかで相手を見下しているからではないか。

ひさびさに「しゃべり場」話であります(笑)。今日は、なかなか娘がお昼寝してくれないので、積み木遊びの相手をしながら、ようやく夕方になってハードディスクに録画しておいたのを見ることができたのでした(寝ろよ、この二歳児め)。で、今回は「一国一城の主を目指すべき!」ということで、防水職人の提言者が、「大企業で人に使われるより、小さくても自分の会社を持つ生き方がいい」と主張しておりました。

まぁ、テーマの是非はおくとして、だ。番組を見ていて、どうもなんちゅうか「イライライライラするなぁもうっ!」ということが何度となくあったのだね。それは、レギュラーの中で学歴・偏差値至上主義を唱えている女の子の発言なのだけど。なにが苛つくのかというと、この子は、人の話を聞いていないのだ。いや、本人は聞いているつもりなのだろうけど、全く理解していない。相手が述べている意見の本質的な部分を見事なぐらいに見落として、見当違いな反対意見ばかりを次から次へと投げかけてくる。これがもう、水を差されるというか、腰を折られるというか、彼女が口を開く度に「ああああああっ!!」と嫁と二人で頭を掻きむしるのであった。前に「バカというのは判断力がない人間だ」と書いたことがあるけど、世の中には「理解力のないバカ」というのも存在するのだということを初めて知ったのであった。

彼女は「学歴が一番大切」といってるぐらいなので、まぁ多分、学校の成績は割といい方なんだろうと思う。学校もおそらく進学校なんだろう。一般的に見れば頭がいいだろうと思える部類に入るのに、なぜこんなにもニブいのだろう。そう思いながら見ていたのだけど、何度となくしゃべっている彼女の姿を見ていて、なんとなくわかってきた部分があった。——おそらく、彼女の頭の中はこう回転しているんじゃないだろうか。「彼の意見は間違っているし、彼より私の方が絶対に優れているのだから、彼の意見など聞く必要はないのだ。なぜなら、彼は防水職人だし、私より明らかに下の人間だから」・・そういうオーラのようなものが彼女から発散されているのが、ものすご〜くよくわかるのだよね。だから、彼の言葉は彼女には全く伝わらないのだった。

なんだってまぁ、まだ十代だってのに、こうも頭のカチカチな人間ができあがってしまったんだろう、としばし日本の将来を憂慮したりなんかしちゃったりしたのだけどそれはさておき。——考えてみれば、こういうことって僕らの周りによくあるのかも知れない。つまりね、「相手のいうことが正しいかどうかではなく、相手が自分より上か下かで相手の意見の正しさを判断する」ということが、だ。例えば、自分の専門分野のことでシロウト同然の人間から意見をされたりすると、「お前みたいなシロウトに何がわかるんだよ、けっ」てなことを思ったりしないだろうか。相手のいっていることが正しいかどうかよりも先に、「相手は自分よりずっと下の人間なのだ」ということをして相手の意見が間違いであると決めてしまうことが。

自分より明らかに下の人間、劣っている人間、あるいはそう思える人間の意見に耳を傾けるということは、これは案外に難しいのかも知れない。・・実は、「相手が劣っている」というのはただ単に自分がそう思っているだけなのであって、本当は相手の方がすぐれたことをいっているのかも知れない、とはなかなか人間考えられないもののようだ。僕らはどうしても相手を値踏みして物事を考える癖がついてしまっている。だが、相手を値踏みした段階で、既に自分は客観的な判断を放棄しているのかも知れない、ということにはなかなか思い至らない。

人の振り見て我が振り直せ、ではないけれど、彼女を見ていて「少なくとも、こんな恥ずかしい態度を自分はとってやしないだろうな」と激しく思ったのでした。——この段階で、僕は多分、彼女のことを激しく下に見ているに違いない。自分がそういう見方をする人間である以上、きっとどこかで彼女と同じ見方をして、気づかないでいることがあるに違いない。そう思うと、ちょっと情けなくなってくる。明日から、少しばかり気をつけないとな。そう気づかせてくれた反面教師の彼女に感謝しておこう。

公開日: 土 - 1月 22, 2005 at 05:33 午後        


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