「公正」な競争
クロネコ対郵政公社。これは「公正」な競争?
最近、かなり悪質な営業マンがうちの近辺を回っている。その営業の企業とは、「郵便局」である。奴らは、インターフォンで「すみませーん、郵便局ですが」といってくる。これでは、誰がどう考えたって「速達かなにか来たのかしら?」と思うだろう。「郵便局です」といわれて居留守を使ったり「出たくありません」という人間はいないだろう。そして出てみると、「実は簡易保険のご案内に参りました・・」とくる。——あ、営業だ。そう思ったときにはもう遅い。
うちの嫁などは、一度この営業にやられて懲りたらしく、それからインターフォンで「郵便局です」といってくると「はい、何でしょう?」とまず聞き返すようになったらしい。——すると。
「郵便局です」
「はい、何でしょう?」
「えーと、郵便局ですが、ちょっとよろしいですか」
「はい、何の御用でしょう?」
「えーと、ちょっとお時間よろしいでしょうか。郵便局なんですが」
「はい、何の御用件でしょうか?」
「・・えー、郵便局ですが。・・・・・簡易保険のご案内に・・・・」
「はい、いりません。(ぷつん)」
・・これほど悪質な営業マンというのを初めて見たぞオレは。
消火器販売の悪徳業者でさえ「消防署の方から来ました」としかいわない。「消防署です」とは絶対にいわないのである。それがやつらは「郵便局です」といって営業にやってくるのだ。もし、消防署の人間が「消防署です」といってやってきて消火器を売りつけ始めたらどうする? 郵便局は、それと同じことをやっているのだ。いくら公社になっただの民営化だのといっても、「郵便」という絶対的に不可欠なインフラを握られている以上、僕らは彼らをシャットアウトすることができない。郵便という人質を取って彼らは営業しているのだ。
先日、クロネコヤマトが新聞に全面広告を出していた。ローソンがヤマトとの契約を打ち切り、郵政公社のゆうパックの受付を始めたことについてのおわびとヤマトの立場の説明のようなものだった。そこで彼らが必死に訴えていたのが「公正な競争」というものについてだ。いわく、郵政公社は郵便業務を独占している、いわく、郵政公社は税制優遇措置を受けている、等々。これじゃ公正じゃない、というわけだ。
もちろん、そうした点も問題だろう。だが、そんなことは実は些細なことだ。何よりもでっかい理由、それは、やつらが「郵便局」である、ということだ。民営化しようがしまいが、やつらは「郵便局」なのだ。それだけで「公正な競争」などやりようがないではないか。なにしろ、「郵便局」なんだから。市役所とか警察とか、そういう「世の中に当たり前のように存在しているもの」なのだ。クロネコや佐川がどんなに頑張ったって、「郵便局」にはなれないだろう。綜合警備保障がどれだけ努力しても「警察」にはなれない。それと一緒だ。
前提条件そのものがまったく違っているのに、競争の「場」だけを公平にして「さ、公平に競争しなさい」といってどーする。それが「公正な競争」なものか。かたや両足に鉄のおもりをつけられ、かたやジャンピングシューズ(by
ドクター中松)を履いて「公正に」100メートル競争をして、それが公正といえるのか。
まぁ、企業間の競争については脇に置く。これも大きな問題だが、それはそれでがんばってもらうしかない。——が、「極悪な営業マン」についてはなんとか考えないといけない。こんな営業が通用すると思わせてはならない。でないと、やつらは際限なくつけあがる。
というわけで、皆さんのお宅にも「郵便局です」とやってきたら、まず「何でしょうか?」と答えよう。決して、「はい」とすぐに開けてはならない。もう、彼らは「郵便を届けにくる人」ではない。「大手企業の営業マン」なのだ。そのことをみんなよっく頭に入れておこう。
公開日: 金 - 8月 27, 2004 at 03:25 午後