お話 「チーズはどこから来た?」


目の前の変化への対応ばかり考えるより、その世界のありようを考えることが大切、というお話。(大嘘)

 
 

お話 「チーズはどこから来た?」

あるところに2匹のネズミと2人の小人がいました。彼らは迷路の中で、チーズを探して暮らしていました。ある日、彼らはチーズステーションCと呼ばれる場所で大量のチーズを発見しました。そこは、いつでも豊富なチーズがあるのです。彼らはそこで毎日幸せに暮らしていました。
 ところが、ある日のことです。その朝目覚めてみると、あれだけあった大量のチーズが、チーズステーションCから消えてしまっていたのです! 一体、何が起こったのでしょう? そして、彼らはどうすればよいのでしょう?
 2匹のネズミたちは、すぐさま行動を起こしました。「もう、ここにチーズはない。なら、別の場所を探そう」——そう考えた2匹は、迷路の中を旅立っていきました。
 一方、2人の小人たちは、「一体、どうしてこんな目に合ってしまったんだ?」と考えました。そして、「しばらくここに腰を落ち着けて、何が起こったのか、状況の変化を見た方がいい」という結論に達しました。

旅立った2匹のネズミたちは、あちこちを探しまわった末、チーズステーションNという場所にチーズがあるのを見つけました。
 一方、2人の小人たちは、いつまでたってもチーズが現れる気配もなく、次第に空腹で弱って来ました。
「仕方ない。もうここにいたって、チーズは戻ってこないんだ。新しいチーズを見つけにいくべきだ」
 2人はそう決断し、空腹を抱えてよろよろと歩き出そうとしました。
 その時。ふと、片方の小人が、思い出したようにこうつぶやきました。

「・・そもそも、なんだってここに大量のチーズがあったんだろう? 僕らは働きもしないのに、チーズの恩恵にあずかれたんだろう? そして、なぜチーズは消えたんだろう?」

・・チーズが消えたのは、お盆休みで研究室が数日閉鎖されるため、「放っておくと腐ってしまうから」と学生の一人がチーズを取り出しておいたからでした。たかだか数日ぐらい、餌なしでも死にはしないだろう。とはいえ、このチーズをわざわざ遠く離れた生ゴミ用のゴミ箱まで捨てにいくのも少々面倒だ。——そこで彼は、もっと手軽な方法を考えました。
「どうせ、たかがネズミと小人だ。他の場所に移しておけばわかりゃしないさ」
そういって、遠く離れたチーズステーションNにチーズを隠しておいたのです。

お盆休みが終わり、帰省していた学生たちが戻って来て、再びチーズステーションCには大量のチーズが届きました。空腹で死にかけていた2人の小人は、腹一杯にチーズを詰め込んでようやく一心地つきました。
 その頃、古いチーズを見つけた2匹のネズミたちは、繁殖していたリステリア菌により食中毒を起こして死んでいました。2匹の死骸を発見したくだんの学生は、舌打ちをしてこうつぶやきました。「・・なんだって、わざわざ遠く離して隠しておいたものを探し出して食うかなぁ」
 一方、残された2人の小人は、「これ以上、実験動物に死なれたら大変だ」と、これまで以上に厚遇されることとなり、迷路の中でいつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

公開日: 木 - 8月 12, 2004 at 04:58 午後        


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