お話 「アラジンと魔法のランプ」


アラジンというごろつきが幸せになる話です。

 
お話 「アラジンと魔法のランプ」

昔々、あるところに、アラジンというろくでもない若者がいました。彼は怠け者で、毎日仕事もせず遊び歩いていました。・・ある日、彼が町中をふらふらしていると、見たこともない男が近づいてきました。

「兄さん、ちょっとしたアルバイトをしないかね? いい金になるよ」
「ふむ、どんな仕事だい?」
「街のはずれまでいって、ちょこっとお使いしてくれるだけさ。それで好きなだけ金をやろう」
「へ? ほんとかい?」

欲が深いアラジンは、男の後について街のはずれまで出かけました。
 そこで男は、やおら呪文を唱えると、地面が割れて鉄の扉が現れ、そこから深い地の底へと続く洞窟が現れました。「この洞穴の奥深くに眠るランプをとってきておくれ。そうしたらなんでも好きなだけくれてやるぞ」アラジンは、うーんと考えましたが、欲の深い怠け者の彼のこと、金になるんならいってやろう、と決心しました。そして、洞穴の奥へと入っていきました。

洞穴の奥にたどり着いた先には——なんとまぁ、金銀の財宝がざくざくと眠っていたのです! アラジンは、片っ端からポケットというポケットに財宝を押し込み、持てる限りの財宝と、それから頼まれていた汚いランプを持って戻っていきました。ところが、あまりにたくさんの財宝を体中に詰め込みすぎたため、体が扉の外に出られません。

「早く、ランプをよこせ」
「なにいってやがんだ、助けてくれよ」
「ランプが先だ!」
「ふーんだ、そうはいくか。オレを早く助けろよ」
「なんだと、このガキが」

男は怒って鉄の扉を閉め、アラジンごと洞窟の中に閉じ込めてしまいました。——うーむ、しまった。どうすればいいのだろうか。彼は考え込んでいましたが助かる道は見つかりません。そのうち彼は考えるのにも飽きてしまい、何気なく例のランプをいじっていると、突然もくもくと煙がでて、魔人が現れたのでした。

「ご主人様、何でもいいつけください。どんなことでも1つだけかなえて差し上げます」

それじゃ、さっそくここから出して・・・と口にしかけたところで、彼はふと思いとどまりました。外に出たら、それでおしまいです。助かりはしますが、それだけです。じゃあ、ドアを開けてもらう? そうすれば、後から宝石を運び出したりできます。が、根っから怠け者のアラジンは、この莫大な財宝を全部えっちらおっちら運び出すなんてバカらしくてやる気にもなれませんでした。じゃあ、どうする? 助かりたいのはもちろんだが、金も欲しいし、女も欲しい。毎日遊んで暮らしたい。そうだ! ハーレムの王様になりたいな。そうすれば、金も女も何でも好きなだけ手に入るぞ。あ〜、とてもじゃないが、1つだけの願いじゃ足りない。

「何でもっていったけど、願いを増やして、っていうのは、だめ?」
魔人は、首を横に振りました。
「魔人をもう10人ほどよこせ、ってのは?」
「ダメです」
「じゃあ、オレを魔人にしてくれ、なんてのは?」
「ダメに決まってるでしょ。もっと普通の希望をいって下さい」
「ケチ・・」

普通の希望はあるのです。けれど、とても1つじゃ済まないのです。願いを叶えるためにはここから抜け出さなくてはいけません。そのためにはただ1つの願いを使わなければなりません。そして、使ってしまっては、もう願いはかなえられないのです。

・・・・待てよ。

アラジンは、ふと思いました。——要するに、ハーレムで毎日楽しく暮らせさえすればいいんだよな。そうだ、考えてみれば簡単なことだったんだ。彼はうなずくと、願いを口にしました。

「ここを、ハーレムにしてくれ」

・・そうして、誰一人知らない地の底で、アラジンは死ぬまで楽しく遊び暮らしましたとさ。——教訓。どんな素晴らしいものであれ、それは使う人間次第。ネコに小判、豚に真珠。

公開日: 木 - 9月 9, 2004 at 07:16 午後        


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