アヅアヅ日記
                         清川 東
 '98.8月21日
 本日より「アヅアヅ日記」をつける。
 今日は池袋仕事。昼、「キッチン南海」で食事のトコロ、甲子園ヨコハマ逆転劇。
 かえってエビス。前田日明vs元カールスモーキーのトークショウ。終って石黒とメ
シ。赤ワインで酔っ払う。
 8月26日
 ヤクザ映画のオーディションを受けた。会場にはヤクザ俳優さんが来てたり、根本
ヒロナリという才能のある俳優、女性ではグラビアの仕事をしてる人etc、いろんな
人が来ていて面白かった。
 8月29日
 松林さんの個展を観に。ブルー調の絵画。松林さんとトークできて良かった。
 9月5日
 PARCOへ。つかこーへいモンテカルロ・イリュージョン。アベちゃん(阿部 
寛)がよかった。魚の店で石黒と飲む。
 9月7日
 服屋「D」の店員さんに精神世界の話をいろいろ聞いた。
 9月9日
 映画「マーティ」を観た。
 9月20日
 ガクからTEL。オレは彼のマジなトコよりバカなトコが好きだ。
 9月23日
 UFOの夢をみた。
 10月1日
 エディ・タウンゼントと田中正悟のビデオを観た。
 10月5日
 逗子とんぼさんを目撃。
 10月11日
 今年もヒクソンの勝ちだった。
 10月13日
 映画「生きない」を観にテアトル新宿へ。ボクは「K」(キタノフィルム)とテア
トル新宿が好きだ。
 10月17日
 書類600ヨリ30に入って、吉川ワーク・S1日目。講師は映画「生きない」の
キャスティングD、吉川さんと、同じくキャスティングD、石垣さん。メンバーの中
にはなんと映画「がんばっていきまっしょい」の葵 若菜さんもいた。
 葵 若菜さんは純粋で全く汚れがないという感じだった。帰りにマネージャーと2
人で道に迷ってたので教えてあげた。
 10月22日
 東川口で仕事して、昼に近くの河川敷で課題の台本を覚える日々…。
「…それが苦痛だとしたら、それ、商売にならないよ」by北野 武。
 10月24日
 吉川ワーク・S2日目。Bクラスを見学に行くと、映画「生きない」の清水カント
クがいらっしゃってた。清水カントクがみんなに言った。
「台本に書かれた台詞の行間を埋めるのが芝居」
 続いてボクらのCクラス。ボクには芝居は難しい。1回目あせりすぎ、2回目ひき
すぎた。
 終ってみんなで飲みにいく。吉川さんの北野 武についての話に、みんな聞き入っ
ていた。ボクは次回の北野映画に初めてスタッフについたホリベさんと話した。シー
クレットになっている次回の北野映画のタイトルにしつこくツッコんだが、最後まで
口を割らなかった。
 10月26日
 「ビートたけしに心酔するってコトが、一番重要なコトなんですよ」by浅草キッ
ド。
 10月31日
 吉川ワーク・S3日目。ハッキリいって演技が「および腰」なんだ。
 映画「ソナチネ」「HANA-BI」に出ている森下能幸さんに逢った。
「あの、俳優さんですか?」
「あ、はい、そうです」
「「ソナチネ」に出てた人ですよね」
「あ、はい」
 後ろで吉川さんがニコニコみている。
「あの、(ヤクザ)事務所で(ヤクザ)刺した人ですよね」
「そうそうそう」
 と吉川さん。
「よくわかるね」
 後ろに丸山(功介)くんがいた。
「あ、津田(寛治)さんにはお世話になってます」
「ああ、どうも」
「名前、なんていうんですか?」
「森下です」
「ボク、「ソナチネ」のビデオ持ってるから家で確認してみます、森下何て言うんで
すか?」
「能幸です」
 帰り、三茶でゴツい男をチャリでひきそうになった。その男のとなりにいたのは、
なんと藤原紀香だった。
 11月3日
 吉川ワーク・S4日目。前半、芝居をやってる充足感がナイ。楽しんでナイのは芝
居ぢゃナイ。
 休憩時間、映画「生きない」の清水カントクんトコ行った。
「映画、観ました」
 後半、キャスティングDの石垣さんのエチュード。エチュードっつーのはアドリヴ
劇。病院にて自殺ネタ。これがウケた!!。セリフに縛られない開放感に酔ってしま
った。…でも、こういうのは、役者はダメだろう。
 レッスン後、飲み屋へ行くまで15分くらい清水カントクとしゃべった。
「ラジオ、聞きました」
(「ビートニクラジオ」司会・浅草キッド、ゲスト・ダンカン、清水カントク)
 から始まって、
「「キッズ・リターン」の後楽園ホール(エキストラ)行きました」
「へぇー」
「あの時の助監督…」
「は、ボク」
「ウンナンと同じ(学校だったんですか)…」
「そう、同期」
 …それから「生きない」のウラ話、主演の大河内さん、三橋クンの話etc、いろい
ろ話した。
 飲み屋に着いてからは、ちょっとしか話せなかったが、清水カントクの女性カンケ
ーの話になった時、みんなの前で、
「ラジオでは、富田靖子さんが好きだって言ってましたよネ」
 と2度つっ込む。
 11月7日
 吉川ワーク・S5日目の合間、近所のにれの樹スタジオに寄った。約1年と9ヵ月
ブリに板を踏んだ。それで気分転換できて芝居ができればカックいいが、そんなこと
はない。夢みたいなコトはないのだ。
 11月9日
 ヘタすぎて言うのもおこがましいが、役者として今、身につけたいのは「現場処理
能力」。したがって何も考えナイ。
 11月12日
 4日連続、東川口で仕事。
 11月14日
 吉川ワーク・S6日目。できない。いよいよダメで、レッスン中に「もう、役者目
指すのはやめよう」と思う。
 帰り、いたい胃をおさえながら「それでもやろう」と思い治す。
 11月15日
 ウチの前の小学校で展覧会がやっていたので、8mm(Film)キャメラもってフラッ
と入る。が、楽しくて延々1時間半もいてしまった。小学生の作品に心が洗われた。
 11月16日
 苦と楽を同じだけ感じられる人になりたい。
 11月21日
 吉川ワーク・S7日目。いよいよ最終日。新宿村スタジオへ行くと森下さんとばっ
たり。
「あ、あのあと「ソナチネ」観ました」
「ああ、どうも」
 そのあと森下さんは「ソナチネ」のウラ話を少ししてくれた。が、緊張していたボ
クは何を聞いたか忘れてしまった。
 本日ラストはオーディション形式。数名の芸能プロダクション関係者が来ていた。
オーディションの順番は実力順だったのかもしれない。ボクは随分、後の方に呼ばれ
た。でも、その分、会場があったまっていたのでやりやすかった。課題演技で、相手
の女のコが途中でセリフを忘れたが、現場処理能力で返した。少しふてぶてしくなれ
た。もう、遅いのだが…。
 休憩時間、ボーッとしていたボクに、石垣さんが森下さんをひき合わせてくれた。
「森下くん、石原くん桜町高校出身なんだって」
「へェ、それどこにあるんですか?」
「桜新町です」
「ヘェ、どこ住んでるの?」
「三軒茶屋です」
「ああ、ボク下北沢だから買い物に(三軒茶屋に)よく行くよ」
「森下さんは自主映画とかやらないんですか?」
「ボクはやらないけど友達でやってる人がいるよ」
 オーディション後半、自己紹介。いままでしなかったメガネをかけて出た。まず、
講師の吉川さんと石垣さんに御礼を言った。役者になりきれなくて、醜態しか観せれ
なかったが、ボクはあの2人を気に入っていたからだ。そして、清水カントクとしゃ
べった夜のコトを話した。
 とうとう、1ヶ月半に及ぶ永い闘いが終った…。
 11月22日
 夕刻、芝の仕事場にガクがバイクで迎えに来た。ケツに乗って三茶のパヴリック・
シアターへ。何が何だかわからナイまま会場へ入ると「ひめゆり」というミュージカ
ル。クサくて笑いそうになり、客席をみわたすと、みんなシクシク泣いている。マジ
かよ?と思ってガクに同意を求めようとしたら、ガクも泣いていた。
 会場を出ると、
「ぢゃ、オレ「電波少年」みるから帰るわ」
 とガクは帰っていった。何だったんだ…。
 11月24日
 先日の「展覧会」のFilm、編集。
 11月28日
 クヌギとSPORTS・GYMへ。汗を流した後、ビールとサワーで乾杯。つまみ
は、カニ味噌、イクラ丼、ホタルイカの沖漬けetc。
 11月30日
 今日、買った本…「不良少年入門」百瀬博教、「月刊・永作博美」。
 12月1日
 プール1Km。
 12月15日
 長渕 剛LIVE観に武道館。濃かった…。
 12月23日
 終日、短編小説「思い出の箱」書く。
 12月31日
 マツーラの車で、はつもーで。ラーメン食って、海へ。満天の星に波の音…。
 はつひのでに向かって8mm廻す。
 '99.1月9日
 片山、ガク、オレとで飲む。
 この3人は高校時代、バカで悪さばかりしていた。でもバカはバカで、それぞれに
悩みがあって面白かった。
 もちろん、今ではスッカリ立派になったかと言えば、そんなコトはない。
 1月14日
 月火水木、埼玉の本庄にて、ハードな仕事。
 2月17日
 園 子温カントク作品に、ちろっと出た。現場に行くと女子高生ばっかり。ヒロイ
ンの女子高生が走るシーンをカメラが追うので、そのコースをみんなで下見。午前中
のラブホテル街をツアーみたいに女子高生がゾロゾロ。
 ボクは女子高生の1人とラブホテルの前でスタンバイ。ヒロインが通過する時に女
子高生をラブホテルにつれこむのだ。
「いいぢゃーん、入ろうよー」
 ばかみたいだけど、ウレシい。
 園組は、すごい貧乏でロケ弁もなく、おにぎり一つとコップ水一杯だった。でも、
こんなに刺激的な現場はないと思う。
 帰り、園カントクは、こんなボクにでも、
「おつかれさま」
 と声をかけてくれた。
 2月21日
 「夢であいましょう」のVTRを観る。往年の丸山明宏や立川談志にビックリ。
 2月27日
 蛍光灯が切れたので、ディスカン・ショップヘ買いに行ったら、行列ができてて入
れなかった。聞けば、今日は「地域振興券」の配布日なのだそうだ。
 3月4日
 映画「鮫肌&桃尻」を観に。吉川ワーク・Sで逢った森下さんがハゲてて出ててビ
ックリ。
 3月6日
 宮下富実夫さんの講演会へ行く。カックいい。石笛の演奏スゲー。
 客席にオリコンの小池社長もいた。
 3月21日
 三穂希祐月さんの講演会へ。
 3月29日
 どわー、本屋で中原淳一の復刻本を買った。スゲー。
 3月30日
 駒沢公園5周。
 4月1日
 ナカジュン(中原淳一)展へ行く。
 4月4日
 七田 眞さんの右脳の本、買う。
 4月9日
 命綱つけて屋上の鉄柵を塗る。
 4月20日
 八雲にて、走る藤 竜也をみた。カックいい。
 4月25日
 石黒氏と園 子温カントクの映画「風」・「桂子ですけど」を観に行く。正直コノ
2本、面白かった。
 園カントク、トーク・ショウ。今度、永瀬正敏主演で撮るらしい。
 5月2日
 仕事。昼、松坂大輔のMOOK買う。
 5月8日
 3連チャンで深夜の仕事。約2時まで。
 5月23日
 石黒とシアターブルックIN野音。客で武田真治が来てた。さっき彼の話してたばか
り。カックいい。
 片山と合流、飲む。
 5月26日
 短編小説「白球」書く。
 6月1日
 「D」で服を買った。
 6月3日
 宮下富実夫講演会Vol.2。
「では、知り合いの長渕 剛をマネして…」
 と自曲の弾き語りを。
 6月6日
 「胴体力」の飛龍会の講習。上級者クラスには、あの中村有志さん(俳優・パント
マイマー)がいらっしゃっていた。カックいい!!。
 6月11日
 水泳1Km。
 6月12日
 最近、水泳の日本選手権にハマっている。
 6月15日
 映画「菊次郎の夏」を観に。夕刻、飛龍会。
 6月18日
 PFFに「菊次郎…」のドキュメンタリーを観に。昨年お世話になった、キャステ
ィングの吉川さんや清水助カン(特に目立ってた)の顔がみれてうれしい。客席には、
俳優の寺島 進さんもいた。
 6月21日
 ドルフィン(スイミング・スクール)へ。
 6月26日
 調布キネマにクヌギと「バタアシ金魚」を観に行く。オレ達世代の映画。
 6月30日
 ガク曰く、
「実行なき知識はゼロ」
 7月1日
 昔のドラマ「親子ゲーム」を観る。
 7月4日
 PFFに、園 子温カントクの新作映画「うつしみ」を観に。ちょっとカットされ
てたけど、一瞬、ボクの姿と声が出た。よかったー、ヒヤヒヤした。
 ちなみに主演の鈴木卓爾さんは、「トキワ荘の青春」で藤子不二雄Aの役をやった
人です。
 7月9日
 26歳に。
 7月11日
 SMAPのBIRDMANのプロモに森下さんが。
 7月14日
 カラオケ。イマジンをうたった。
 7月17日
 ドラゴンロック観劇後、石黒と飲む。朝帰る。
 7月25日
 江の島花火大会へ。月、波、花火。
 8月1日
 飛龍会講習。
 8月2日
 アテネ・フランセへ。松岡錠司作品のヒロイン、西村むつみを観に。
 8月4日
 ドルフィン。やっぱ水泳面白い。
 8月14日
 憧れの大林組のえきすとら。「淀川長治物語」。明治時代の映画館のシーン。
 俳優さんは、柄本 明さん、秋吉久美子さん、ミッキー・カーチスさん、岸部一徳
さんetc…。(袖で白石加代子さんがスタンバイしてた)。
 ボクは和装で、客の1人。
 前に一緒になった助監督さんがいた(谷口さん)。
 今日の日活撮影所は一時、どしゃぶりの雨。
 8月16日
 大林組えきすとら、2日目。2日も行けるなんて有難い。
 今日のボクは、当時の学生のカッコ(学帽、丸メガネ、和装)で通行人。憧れの大
林カントクに、
「学生さん」
 と呼ばれたのは嬉しかったが、えきすとらとはいえ、芝居がうまくできない…。
(現場には、ピンク映画の女王・吉行由実さん、子役の宮崎あおいさんetcの姿が。)
 待ち時間は楽しかったが、撮影は大変だった。カントク特有の合成シーンの為、撮
っても撮っても終わらない。音声さんが、
「大林組で、この時間は珍しい」
 と言っていた。カントクの淀川さんへの思いがあったのかもしれない。
 結局、夜中の3時過ぎに撮影終了。ボロボロになった助カントクさんが、1人1人
に握手を求めてきた。
「おつかれさまでした」
 ボクは映画人のタフさに感動した。そして、みなさんと時間を共有できて、幸せで
した。
 8月17日
 クヌギとキックを観に後楽園HALLへ。久々に立嶋篤史が観れてウレシかった。
 8月18日
 教習所。
 8月20日
 アヅアヅ日記、1周年、感謝。
 
 






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